2005年09月23日19時23分掲載
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イスラム教徒の米上院議員が夢、自己主張始めたアラブ系の若者たち
米国に移住したイスラム教徒を親に持つ若い世代が、自己主張をし始めている。米国の学校で自由と民主主義を学んだ彼らは、親たちのように声を潜めて“反イスラムの嵐”が吹きすぎるのを待ったりはしない。「われわれは、米国系イスラム教徒だ」と自信を持って主張する若者も出現している。彼らは、米国社会に新風を吹き込むだけのエネルギーを秘めているともいえる。(ベリタ通信=有馬洋行)
2001年の9・11同時多発テロ以降、米国は対テロ戦争を宣言し、テロの引き金になったイスラム過激思想に厳しい姿勢を示した。この結果、米国内にいるイスラム系移民は沈黙した。しかし、米国の自由と民主主義を学んで育った彼らの子どもたちは、親の世代とは、違った感性、感覚を持っている。
米紙サンディエゴ・ユニオン・トリビューンによると、米カリフォルニア州テメキュラに住む17歳の高校生サミー・ハーモーシュ君。彼の夢は、いつの日にか、イスラム教徒である米上院議員になることだという。
サーフィンを愛する16歳の高校生イリアス・ハサイン君は、米国にいるイスラム教徒はもっと自己主張を、と力説する。友達はイスラム教徒もいれば、キリスト、ユダヤ教徒の者もいる。「自分と違う宗教だからと言って、人を憎んだり、嫌いになったりしない」
イラクなどで自爆テロが頻発していることについて、カリフォルニア大学サンディエゴ校でイスラム学生連合委員長を務めるバデル・エル・グセイン君(21)は、「人の心を変えるのは、衝撃(テロ)ではない」と、テロには反対する。
17歳の高校生イブラヒム・ボーリル君は、マスコミが「イスラム教テロリスト」と呼ぶことに反発する。「単にテロリストと呼ぶべきだ」
こうした若者たちは、自分たちの主張を述べるために、小規模なデモに参加したりする。ヒスパニック(中南米系)の移民たちと、権利の確保を求めて共闘したりもする。
時折、集会中、周囲から罵声を浴びることもある。「イスラム教米国人に感謝しよう。今日一日、ビルや列車が爆破されることがなかったから」と皮肉られたケースも。
一方、若者たちは、キリスト教国家である米国で生活しながらも、家庭内で学ぶイスラム教の伝統を守りながら、巧みに成長している。しかし、米国内で反イスラム感情が広がっているのも事実だ。
フランスの公立学校では、女性用のスカーフ(ヒジャブ)の着用が禁止されるなどしている。中学1年のサブリナ・ヤシンさん(10)は迷った末、新学期が始った初日、スカーフを着て登校した。母親も最近、公衆の場では、スカーフを着用するようにした。「娘1人だけのことにしたくなかった」と、母親は言う。
カリフォルニア大学サンディエゴ校の学生アミナ・アビドさん(21)は、スカーフの着用の必要性について「これは伝統であり、神がそうするようわれわれに話した。だからそれに従う」と話す。
程度の差はあれ、イスラム教徒の若者たちは、キリスト教社会と、うまく折り合いをつけながら生活していく知恵を習得していく。しかし、西洋流の考え方とイスラムの教えの狭間で、自分たちがどちらの文化の属するのかという「アイデンティティー・クライシス」に悩む若者もいるという。
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