2005年09月28日11時40分掲載  無料記事
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仕事より「育児優先」 エリート女子大生の価値観めぐり米で賛否 

 米コネチカット州にあるエール大学は、米北東部にある名門8大学(アイビーリーグ)の一つで、全米から秀才の男女学生が集まることで知られる。卒業生の多くは、政治、経済、司法などの一線で指導者として活躍している。最近、このエール大学の女子学生に対し、米国の新聞社が、将来の進路を聞いたところ、「仕事」より「育児」を優先させたいとの意見が目立ち、波紋を呼んでいる。(ベリタ通信=江口惇) 
 
 米紙ニューヨーク・タイムズは最近、「エリート大学の多くの女子学生がキャリアの道より育児を優先」とする記事を掲げた。同紙は、エール大学の1年生と4年生の計138人の女子大生に対し、電子メールで世論調査を行い、この結果を基に、女性のルイーズ・ストーリー記者が記事を執筆した。 
 
 記事は138人のうち60%が、キャリアより子育てを優先と回答したと指摘。60%の内訳は、子どもができたら仕事を辞めるが半分で、残り半分は、子どもが学齢に達するまで“休業”し、その後パートの仕事に出るというもの。 
 
 他のハーバードや、ペンシルベニアなどのエリート校の女子学生も、同じような意見を述べていると、タイムズ紙は報じている。 
 
▽「伝統」へ回帰? 
 
 米国では長年、女性の地位向上を求めたフェミニズム運動によって、女性の社会的進出が図られてきた。しかし、タイムズ紙の記事は、エリート教育を受けた現代の女子学生が、社会への進出より、伝統的な価値観である「育児」に専念する傾向を強めていることを印象付けた。 
 
 タイムズ紙の記事については、様々な反響が出ている。米デーリー・カーディナル(電子版)は、エールの女子大生の意見は、エールへの入学を拒否されたキャリア重視の女子大生の「顔に平手を食わせるもの」と批判。また私立大学であるエールに費やされた高額の授業料を、社会に出て“回収”する必要がないのは、エリート校の学生は、中流階級以上の出身で、お金に困っていないためだと皮肉った。 
 
 「マイ・ガール」の著作があるカレン・スタビナーさんは、ロサンゼルス・タイムズ紙への寄稿で、エリート校が、金持ちの花婿を見つける場と化しているのかと疑問を呈し、その上で、米国では結婚したものの半数が離婚する状況がわかっているのだろうかと、エールの女子大生に問いかけた。 
 
 一方、ネット誌「スレート」などは、エールの女子大生に対する世論調査の手法などに不備があったと主張し、タイムズ紙の記事自体に疑問を呈した。さらに筆者のストーリー記者は、コロンビア大学のジャーナリズム学科(大学院)に在学中、修士論文の中で、同じ内容を扱っていたと指摘。またタイムズ紙の記事の書き方についても、あいまいな表現が多いと注文を付けた。同記者は2005年にコロンビア大で修士を取得しているという。タイムズ紙では売り出し中の若手記者とされる。 
 
 リベラルの雑誌アメリカン・プロスペクト(電子版)も、「不完全なデータを使った記事」と、記事自体の信憑性に疑問を投げかける一方、女性は男性に比べ、キャリアを真剣に考えていないというステレオタイプ的な見方に乗った記事だと批判した。 


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