2005年10月03日11時11分掲載  無料記事
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反イスラム的書き込みに強権発動 管理国家シンガポール

 多人種、多宗教を抱える多民族国家が最も重視するのが「国民の融和」だ。人口約430万人の都市国家シンガポールも例外ではない。同国政府は「融和」維持のため、報道機関だけでなく、最近ではインターネットも厳しく監視し、不測の事態が起きぬよう注意を怠らない。中でも宗派対立を煽るような行動は厳禁だ。そんな中で、シンガポール政府をあわてさせるようなケースが起きた。(ベリタ通信=都葉郁夫) 
 
 同国の有力紙ストレーツ・タイムズによると、発端となったのは同紙に最近掲載された投書だった。投書の主はイスラム教徒のマレー系シンガポール人の女性で、タクシー会社がかごに入れないままの犬の“乗車”を認めていることに対し、「座席が犬のよだれや足で汚される恐れがある」と疑問を呈した。 イスラム教徒の多くが、「犬」を敬遠することはよく知られている。 
 
 イスラム教指導者の1人は、この投書を基に取材した同紙記者に対し、「イスラム教徒の多くは、犬のよだれに触れることを禁じられている」と答えたという。シンガポールに住むマレー系のイスラム教徒は全人口の13・7%、約59万人とされる。 
 
 同投書に対し、人口の約78%を占める中国系シンガポール人たちから早速、様々な反応があり、そのうち犬小屋販売会社に勤める27歳の同男性ら2人は、犬をテーマにしたインターネットのサイトで投書内容に反論するとともに、イスラム教を批判する内容の書き込みを行った。 
 
 この反イスラム的内容に敏感に反応したのがシンガポール政府。ネット上での監視を怠らない同政府は、二人を検察当局に扇動罪で起訴する事態になった。 
 
 警察当局は男性の書き込みを「宗教の違うシンガポール国民の間に悪意と敵意を持ち込ませる内容」とし、この行為が1948年に制定された「扇動禁止法」違反にあたると明らかにした。しかし、混乱の拡大を懸念してか、同当局者は書き込みの詳しい内容の公表を意図的に避けている。 
 
 起訴に対し男性2人がどのような供述をしたかは明らかになっていないが、2人は現在、1万シンガポールドル(約66万4000円)の保釈金を払い、自宅で次回公判への出廷に備えているという。 
 
 「扇動禁止法」によると、裁判で有罪と認められると、2人には最高で禁固3年、罰金5000同ドル(約33万2000円)が科せられることになる。 
 
 シンガポールは1965年8月、マレーシアから分離独立したが、数年後、マレーシアで起きたマレー系住民による反中国系暴動の余波が及び、民族対立を経験。これを機に当時のリー・クアンユー首相は政策の中心に「国民融和」を据え、同時に民族・宗教対立をあおる動きを最優先で取り締まってきた。同国では信教の自由が認められているが、公立学校に通うイスラム教徒の女子生徒・学生には、頭髪を被うベールの着用は許されていない。 
 
 ゴー・チョクトン前首相そしてリー・シェンロン現首相も同政策を引き継ぐとともに、コンピューターが普及している最近ではインターネット上のサイトにも目を光らせ、その内容が「融和」を脅かす可能性を持つかどうかを厳しく監視している。 


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