2005年10月07日10時53分掲載
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心の傷を癒すサイトを立ち上げる 生存者の1人の新聞記者
【東京7日=小林恭子】56人が命を落とした7月7日のロンドンでの同時爆破テロから3カ月。命は助かったもののテロの被害に遭った生存者たちは、依然心の傷を負ってる。そうした中で、生存者の1人が、同士の情報交換の場としてウエブサイトを立ち上げたという。BBCオンラインが7日、伝えた。
「ロンドン・リカバーズ」と名づけられたウエブサイトを立ち上げたのは、英国在住のカナダ人新聞記者ピーター・ジモンジックさん。自らテロの遭遇し、心に大きな傷を負った。この経験から、自分と同じような状況にいる人々のための情報交換の場としてサイトをスタートさせた。(http://www.londonrecovers.com)
7日、ジモンジックさんはロンドンの地下鉄サークル線の電車に乗っていた。エッジウエアロード駅近くのトンネルにジモンジックさんが乗っていた電車が差し掛かったところ、すれ違った隣の電車内で爆発が起き、テロに巻き込まれた。午前8時50分だった。
ジモンジックさんは負傷した人々を車内から助け出す作業を1時間ほど続けた。結局、ジモンジックさんが乗っていた車両では7人が死亡した。 現場の悲惨な光景が目に焼きついた。
事件の後、自分のアパートに戻ったが、現場の状況が頭の中から離れなかった。周囲の人に対しても、怒りを感じるようになり、家族や友人とのコミュニケーションも困難になった。
家族らはジモンジックさんに対し同情を持って接してくれたが、「死者が出た車両内にいて、自分が実際にどんな思いをしたのか、他人には絶対に分からない」という思いがあったという。
しかし、誰かに自分の思いを話したくて、かかりつけの医者にカウンセリングを頼もうとしたら、ジモンジックさんは体に負傷を追ったわけではなかったので、後回しにされたという。カウンセリングの予約は8カ月後、とされた。
自分の体験をサンデー・テレグラフ紙で語ると、他の生存者がジモンジックさんに声をかけてきた。テロに遭遇した人々と共通の体験や思いを語りあう中で、心が癒されるのを感じたという。ジモンジックさんは、自分同様、体に負傷をおわなくても心にトラウマを受け、誰にも心の内を話すことができない人がたくさんいるのではないか、と思ったという。
ジモンジックさんのサイトにアクセスした生存者の一人、アリス・フラーさんは、事件後、命に別条がなかったということに、罪悪感さえ感じていた。しかし、ジモンジックさんが作ったサイトを見る中で、他の生存者がどのように感じ、どのように生きているかを読み、気持ちが楽になっていったという。
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