2005年10月09日21時42分掲載
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オランウータンが12年後に絶滅の危機 アブラヤシ農園拡大が原因
人なつっこさと愛嬌のある行動で人気を集める大型類人猿「オランウータン」が今、生息地として知られるインドネシアとマレーシアにある森林(熱帯雨林)の破壊拡大により、12年後には絶滅の危機に陥る恐れがあるという。森林破壊の原因はさまざまだが、中でも“主犯”と名指しされるのが、生息地のある森林で進む大規模なアブラヤシ農園の建設だ。国際市場で需要の高まるヤシ油の生産に向け、低地の熱帯雨林を伐採し、アブラヤシを大量植林する。この結果、オランウータンは生息地を次々に奪われ、その数を年々減らしているという。環境保護団体の報告を基に、厳しさを増すオランウータンの生息現状を伝える。(ベリタ通信=都葉郁夫)
オランウータン絶滅危機の警鐘を鳴らしているのは、英国を拠点とする環境保護団体「フレンズ・オブ・ザ・アース」(地球の友)。「類人猿を追い詰めるヤシ油」と題するその最新報告は、「オランウータンを絶滅へ向かわせている元凶は、熱帯林の広域伐採で生息地を奪い続けるアブラヤシ農園」と断定。その上で、オランウータン絶滅の危機を回避するには、関係諸国・機関がヤシ油交易規制を早急に実施し、生息地を守るよう訴えている。
報告によると、オランウータンはアジアで唯一の大型類人猿で、現在の生息地はインドネシアのスマトラ島北西部、それに同国とマレーシアが国境を接するボルネオ(カリマンタン)島だけという。他の動物保護団体は、オランウータンの生息総数が両島合わせても約3万頭で、100年前と比べ約90%も激減したと推定している。
減少原因はこれまで、密猟、森林の違法伐採、農地開墾、焼き畑農業、そして山火事などとされてきたが、報告書は「アブラヤシ農園が熱帯雨林の生息地を奪っており、生息地の約90%が破壊状態にある」とし、ヤシ油の需要増大が同農園建設をもたらしていると分析。さらに、「動物学者の推定では、生息地破壊により毎年約5千頭のオランウータンが死んでおり、この状態が続けば、オランウータンは12年後には絶滅する」と警告している。
▽森林火災で3分の1が死亡
一方、同報告は「ヤシ油を原料にパン、マーガリン、口紅、石鹸などを製造および販売している英国内の業者は、こうしたオランウータンの危機状態を正確に認識し、早急な対応策を講じるべきだ」と訴えている。
しかし、報告によると、こうした業者の約84%は熱帯雨林破壊の進むインドネシアおよびマレーシア産ヤシ油の輸入制限といった対策を取っておらず、スーパー各店に至っては店頭に置いているマーガリン、口紅、石鹸などの原料に使われているヤシ油の「原産地」さえ知らなかったという。
報告はまた、今年8月にスマトラ島で発生した森林火災は、アブラヤシ農園建設に向けて熱帯林を焼き払ったのが原因と指摘するとともに、1998年に猛威を振るったボルネオ島での森林火災では、同島に生息していたオランウータンの3分の1が死んだと推定している。
報告は最後に、「生息地を奪うアブラヤシ農園の建設がオランウータンにとって最大の敵。規制のないままで建設が続けば、オランウータンが絶滅の危機に直面するのは確実」とする動物学者の言葉を紹介。その上でヤシ油の生産国と輸入国および製造業者と販売業者がオランウータンを取り巻く現状をしっかり認識し、対策を講じるよう強く訴えている。
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