2005年10月10日10時04分掲載  無料記事
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米国は自滅の道に ブレジンスキー氏が外交政策の修正求める

 カーター米政権(1977−81年)時代に大統領補佐官(国家安全保障問題担当)を務め、ブッシュ政権の対イラク戦争を批判しているブレジンスキー氏が、米国は自滅の道を歩んでいるとして、イラクを含む対外政策の大幅な修正を要求している。(ベリタ通信=江口惇) 
 
 同氏は、ロサンゼルス・タイムズ紙掲載された「米国の大きな失敗」と題する寄稿文の中で、ブッシュ大統領の取っている外交政策を、大歴史家トインビーの「歴史の研究」を引用して、自滅的な政策だと指摘。その上で、最近政権内で対イラク政策に変化の兆しがあったが、ブッシュ大統領は6日の演説で、2004年の大統領選挙の時のように、再びイラク戦争を正当化するデマゴーグ的な主張に戻った、と失望感を表明した。 
 
 同氏によると、対イラク戦争は、ブッシュ政権の少数の人間によって決定され、また偽りの情報を元に、言葉のレトリックを駆使して遂行された。その結果、予想外の流血と経費を生み出した。 
 
 今や、米国は中東では、かつて中東を支配した英国に代わる帝国主義者とみられる一方、イスラエルのパートナーの烙印を押されている。こうした見方は、イスラム世界全般に広がっている。 
 
 ブレジンスキー氏は、テロリストは生まれつきの者ではなく、経験、印象、憎悪、歴史的記憶、宗教的狂信主義、洗脳などによって形成され、またテレビなどによって映し出されるイメージによっても作り出されると述べた。米国では「ロリストは自由を憎悪している」との見方が一般的だが、同氏は、テロリストが生まれる背景をまったく認めない米政権とは対照的に、イスラム世界には、彼らに共感する声があると指摘した。 
 
 このほか、米国への反感が強まっている理由として、核拡散防止に対するブッシュ政権の首尾一貫しない政策に言及。最近、インドからイラク戦争への協力を得る目的と中国へのけん制のため、インドに対し原子力技術の供与などを決めたことを批判した。 
 
 また軍事力では劣るイラクを武力侵攻し、核武装をしている可能性のある北朝鮮に対しては外交的協議を行なうという、米国の「二重基準」の姿勢によって、イランは自国の安全は核兵器によってのみ守られる、との考えを一層強くしてしまったと述べた。 
 
 さらに米軍兵士によるイラクの旧アブグレイブ刑務所での収容者虐待事件は、結果的に下級兵士のみが罰せられ、上官やトップの軍指導部の責任が回避された。この結果、米国へのモラル上の不信感が増幅した。 
 
 国内的には戦費増や財政赤字によって、世界一の債務国の道を歩んでいると指摘し、戦費増によって、米国の長期的な経済発展を支える投資、科学革新、教育などへの支出がおろそかになっていると警告した。 
 
 ブレジンスキー氏は、ブッシュ政権が対外政策を軌道修正するのはまだ可能だと述べ、そのためには、より穏健な常識的なイニシアチブ、つまり超党派的な外交政策を打ち出すべきだと提言。それによって、対イラク戦争の「成功」をあまり高く見積もらずに、早ければ来年中に米軍が撤退できるようにすべきだとした。 
 
 イラクはスンニ、シーア、クルドの3派が拮抗し、内戦の危険性も指摘されているが、ブレジンスキー氏は米軍が撤退すれば、3派は自分たちで政治的合意を達成するだろうとの楽観的な見通しを表明した。 


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