2005年10月20日20時55分掲載
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中東
イラク民間人死者が最大で3万人突破 治安悪化で増える傾向に 英団体の開戦以来の集計
【東京20日=河合敦】イラク戦争開戦以来、民間人の犠牲者数を集計している英市民団体「イラク・ボディ・カウント」によると、20日までの民間人の死者数は最大で3万人を超え、3万18人となった。最小の見積もりでは2万6661人。民間人犠牲者が2万人を超えたのは今年4月で、わずか半年でさらに1万人が死亡、死者数は増加傾向を強めている。
同団体は世界各国のメディアが報じたイラク民間人の犠牲者に関する1万点以上の報道を分析、死者数を集計してきている。
同団体による2003年3月のイラク戦争開戦から05年3月までの集計の詳細レポート
http://www.iraqbodycount.net/press/pr12.php
によると、同期間に死亡した民間人(非戦闘員)は2万4865人で、このうち、女性と子どもは約20%を占めている。1日平均で約34人の民間人が死亡している計算になる。
死者は特に首都バグダッドに集中しており、全体の半数が首都で死亡したとみられている。
開戦当初の大規模戦闘が終わった後の民間人死者の比較では、03年から04年(6215人)と比べて、04年から05年(1万1351人)の方がほぼ倍となっており、イラクの治安が悪化傾向にあることを示している。
民間人を死に至らしめた原因について同レポートは、米軍による殺害が原因のトップで37%としているが、米軍侵攻後の一般の暴力犯罪などによる死者も36%と拮抗していることを指摘。米軍による攻撃だけでなく、犯罪多発が市民の脅威となっていることを示した。反米武装勢力が殺害したケースは9%としている。
民間人の具体的な死因としては爆発物による場合が53%でトップ。その爆発物の64%が空爆によってもたらされたものだったという。
同レポートは、これらの分析に使ったメディアの報道のうち、通信社3社(ロイター、AP、AFPとみられる)の報道が全体の3分の1を占めているとし、分析に使ったそれらの報道が死者数の根拠としているものの多くは「目撃者情報」で、公式発表の数字が少ないことは認めている。
レポートを作成した同団体のジョン・スロボーダ氏は「イラク戦争開戦を決めた(米英などの)決定の中で、これら民間人の死者はコストとして忘れられていたのではないか」と指摘、民間人の犠牲の重さを国際社会はより深く受け止めるべきだと訴えている。
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