2005年10月28日17時57分掲載  無料記事
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ギャンブル中毒警告のサイト立ち上げ、カジノ建設でシンガポール

 4年後にラスベガス級のカジノ建設を決めたシンガポール政府がこのほど、カジノの弊害を国民に訴えるウエブサイトを立ち上げた。公営カジノ建設に国民からの異論の声が上がっているのを配慮した動きのようだ。何事にも「清潔さ」を求める同政府が、将来懸念されるギャンブル中毒者の出現を食い止めたいとの苦肉の策とも言えそうだ。(ベリタ通信=都葉郁夫) 
 
 ウェブサイトは、「予定時間を超えてギャンブルを続けてしまう」「借金してまでもギャンブル通いする」「ギャンブルで負けると落ち込み、時には自殺も考える」──などといった症状が現われれば、既に「ギャンブル中毒症状」が表れているなどと警告している。 
 
 シンガポール政府は今年4月、国の魅力をアップし、外国人観光客をより多く引きつけるのを狙って、2009年までにラスベガス級のカジノ2カ所を建設することを決めた。 
 
 しかし、リー・シェンロン政権が打ち出したこの公営カジノ建設に対し、国民の間からは青少年や家庭に与える影響、治安の悪化とギャンブル中毒者の出現などを懸念して、建設に反対する声が相当多く聞かれた。 
 
▽ギャンブル中毒者の生々しい体験も 
 
 これに対し政府はカジノ入場を外国人に限定するなどの案を検討しているほか、国民のこうした懸念に対処する必要もあって、8月にはギャンブルに関する啓蒙教育や広報活動を担当する「ギャンブル問題協議会」を設置した。そして、15人の委員で構成される同協議会が立ち上げ、管理しているのが、ギャンブルに関する「よろず相談所」とも言える今回のウエブサイト。 
 
 このサイトでまず目に付くのが、「ギャンブルの諸問題」と「生の声」という欄だ。「財布が空になるまでギャンブルに注ぎ込む」「ギャンブルのことを考えると夜も寝られない」「ギャンブルをやめようとしてもやめられない」「生活費や借金返済資金を得ようとギャンブルをする」──などの問題点が紹介され、ひとつでも身に覚えがあれば、専門家に相談したり、診断を受けるべきだと勧告している。 
 
 また、ギャンブルをやり始め、やがてのめり込み、最後には生活を破壊してしまった元ギャンブル中毒者が「生々しい体験」を告白している。 
 
 政府調査によると、18歳以上のシンガポール国民のうち半数を超える58%が「何らかの形」でギャンブルをしたことがあると回答、さらに、2・1%にギャンブル中毒の危険性が強く出ているという。 
 
 また、合法、違法を問わず、同国民は年間数十億ドルをギャンブルに費やすほか、公営、民営のカジノがあるアジア諸国、オーストラリアそして米国にギャンブルツアーに出かける者もいる。 
 
 シンガポールには現在、賭けの対象となるものとしては競馬、宝くじ、スポーツ賭博があり、政府はこれらから毎年8億ドル(約904億円)の利益を上げている。これに加えて4年後には公営カジノが開設されるわけで、政府のギャンブルからの実入りはさらに増えることになる。 
 
 サイトを立ち上げた同協議会のリム・ホク・サン会長は「このサイトを通しギャンブルにのめり込み過ぎによる影響、危険な兆候、そして相談所の連絡先などをよく知ってもらいたい」と期待するとともに、今後は、新聞やテレビ、ラジオなどでも同様の注意を国民に呼び掛けたいとしている。 


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