2005年11月02日14時42分掲載
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金持ちに優しい米のエリート大学 奨学金も高所得者の子弟に
米国の一流私立大学の授業料は大変高い。ハーバードなど名門私立大では、成績優秀者にはスカラーシップ(奨学金)を給付し、授業料の免除などを行なっているが、多くが高所得者層の子弟だという。裕福な学生には、本来奨学金はあまり必要はないとはずだが、こうした矛盾が起きるのは、奨学金が大学入学資格試験(SAT)で高得点を挙げた者に給付されるためだ。日本でも偏差値の高い大学の学生は親の平均所得が高い傾向が出ているが、米紙ロサンゼルス・タイムズは米国の現状を「エリート大学は金持ちの子息の大学になった」と皮肉っている。(ベリタ通信=エレナ吉村)
名門ハーバード大の一年間の授業料は4万1675ドル(約460万円)。米国の平均的な家庭の年間所得は4万4400ドル。低中所得層から子どもを一流私立大学に送り出すのは、大変な負担になる。
米国では、エリート大学と言われるのは私立大学に多い。名門私大では、「プレップ・スクール」と呼ばれる名門私立高校や、富裕層出身の学生がキャンパスにあふれたのを反省し、かなり昔から低中所得層にも広く門戸を開放するようになっている。
ブッシュ大統領は、プレップ・スクールからエール大学に進学した。高校時代の成績はぱっとしなかった。しかし、当時のエール大では成績が中クラスでも、名士の子息を受け入れる伝統があった。エール大では、こうしたことを反省、ブッシュ氏が大学に入学した直後から、公立高校の出身者を広く受け入れる方針に変更している。
しかし、最近の私立大学は、進学ランキングで高位を占めることに関心があり、苦学生に特に配慮をしていない。ハーバード大のサマーズ学長は、年間所得が4万ドル以下の家庭では、学生をハーバードに送り出すのは困難といった趣旨の発言をしている。
こうした苦学生が学内の奨学金の給付を受けようとしても、既に富裕層の子弟が独占している。高収入を背景にエリート教育を受け、SATで高得点を挙げている多くが、富裕層の出身だ。
▽優秀者奨学金が大学のランク上げる現実も
私立大学では、苦学生には別個に財政的支援を行なっているが、南カリフォルニア大学学事部のキャサリン・ハーリングトンさんは、成績優秀者へのスカラーシップ給付と、苦学生への財政支援が同等に行なわれるべきだと指摘する。
成績優秀者への奨学金給付は、大学のランクを向上させる効果があるとされる。アトランタのエモリー大学は、90年には米誌USニューズ・アンド・ワールド・レポートの進学ランキングでは、枠外だった。
しかし、年間150人から200人の成績優秀者に奨学金を給付する制度を導入した結果、ことしのランキングでは、20位に上昇している。セントルイス・ワシントン大学でも同様に、90年の24位から11位にランクを上げている。
米国は能力主義といわれるが、エリートの門といわれる一流私立大学は、低中所得層にとっては、財政的に狭き門といえる。しかし、ハーバード大ではことし、低所得層の学生から応募が増加したという。名門私大への憧れが根強いことを裏付けているが、ハーバードなど一流私大では、卒業後、高額の給与が保証されているといわれる。子どもに高い授業料を払うのは将来に備えた投資と考える人も多い。
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