2005年11月03日11時36分掲載  無料記事
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断食明けの贈答攻勢はご法度 インドネシア大統領が呼びかけ

 イスラム教徒にとり「修行の1カ月」とも言われる断食月(ラマダン)。その終了(断食月明け)が近づく中、世界最大の同教徒数(約1億9000万人)を誇るインドネシアのユドヨノ大統領はこのほど、レバラン(断食月明けの大祭)時、主に公務員の部下が上司に贈ったり、企業人が公務員たちに行う「贈答」を廃止するよう呼び掛けた。上司らの関心を引くのを狙った「贈答」が“汚職の温床”とされ、国民の批判を浴びてきたのに配慮した措置。しかし、汚職がはびこったスハルト元政権下で顕著となったこの「贈答」攻勢は既に習慣化している。それだけに今回の廃止呼び掛けがどこまで効果を上げるかは不透明だ。(ベリタ通信=都葉郁夫) 
 
 日本で言うなら、日ごろお世話になった人たちに、感謝の意を込めて贈る「お歳暮」の習慣と似ているとも言える。しかし、インドネシアでは公務員の部下が上司に行うレバラン時の贈答は、感謝の意をはるかに通り越し、人事や待遇面で有利な扱いを期待する気持ちがより強く含まれている。 
 
 たとえば、業者らに許認可を出すような利害関係が強く、多額の手数料の入るポストはインドネシア語で「トゥンパット・バサ(湿った場所)」と呼ばれ、当然、給与以外の“余禄”が多く見込める。 
 
このため、断食月明けの大祭は人事権などを持つ上司へ接近する絶好の機会となり、こうしたより良いポストを狙う野心を持った部下は、上司だけでなくその妻の趣味にまで配慮した上で、贈答を行うのがほぼ常識となっている。 
 
 また、企業人たちからもこの機会を利用し、商売や取引に関係している部署の幹部公務員や政府高官たちに高額の贈答が行われ、贈り物の中には、高価な家電製品、外国旅行の招待券、さらに乗用車や家屋・不動産までが含まれることさえあるという。 
 
 ユドヨノ大統領は今回、こうした悪しき習慣を廃止し、贈答の余裕があるのなら、貧困層への支援に回すよう呼び掛けた。さらに、「閣僚たちが私に贈答を行う必要はない。贈答でポストを与えることなどはない」と言明、大統領が率先して贈答廃止に取り組む姿勢を示した。 
 
 その背景として第一に挙げられるのが、大統領が声高に叫んでも一向に改善しない汚職体質が、国民の大きな反発と海外からの不信を呼んでいるからだ。国際的な世論調査機関や非政府組織が最近、相次いで発表した「各国清潔度調査」によると、インドネシアは相も変わらず、アジア地域内では最低級のランクに位置し、汚職まん延が解消していない現状が明らかになった。 
 
 特に、国の透明性調査では、後発のベトナム、カンボジア、ラオスのインドシナ3国にも追い抜かれ、東南アジア諸国連合(ASEAN)内では、ミャンマーに次いで下から2番目という不名誉な結果を与えられた。 
 
 ユドヨノ政権に対しては、最近実施した燃料価格の大幅引き上げへ国民からの強い反発もある。そうした事情も配慮し、発足から1年を過ぎたばかりの政権のユドヨノ大統領としては、自らを含め、身辺の清潔さを国民にアピールする必要があり、贈答習慣を廃止することを決めた。 
 
 インドネシアのイスラム教徒たちは間もなくやって来る、1年で最も楽しみにしているレバランで、ユドヨノ大統領の呼び掛けがどれだけ効果を上げるかどうかに関心を寄せている。 


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