2005年11月08日18時29分掲載  無料記事
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ナイジェリア発のネット詐欺が横行 米国人をカモにした「419号事件」

 西アフリカにあるナイジェリアは、今やインターネット詐欺の発信基地としても知られている。電子メールを一方的にユーザーに送りつけて金を巧みにだまし取る通称「419号事件」では、国の威信をすっかり落とした。しかし、犯罪の撲滅にはほど遠く、ネット詐欺は、野放し状態だ。一方、最近はネット詐欺に加え、偽のドル紙幣をフィリピン、メキシコにも持ち込み、ぼろ儲けをしようとしたナイジェリア人が逮捕されるなど、国際的犯罪ネットワークの暗躍が懸念されている。(ベリタ通信=エレナ吉村) 
 
 「419号事件」の手口は、まず詐欺団がネットを使ってユーザーの電子メールのアドレスを割り出し、その後、ユーザーに一方的にメールを送信。メールの中身は、「多額の金を送金したい。ついてはあなたの口座を借りたい。手数料は金額の20%。口座番号を教えてほしい」などと述べて、勧誘。 
 
 大半の人は「削除」をクリックしてメールを抹消するが、極めて少ない確率だが、内容を信じて、金を送ったりする人がいる。その後不安に感じたユーザーが話を解消したいと述べると、アフリカに来ないと無理だとか言って、応じない。実際にアフリカに行く人もおり、その挙げ句現地で脅迫されたり、そのまま行方がわからなくなる事態も起きている。「419」の呼称は、ナイジェリア刑法の詐欺に関する条項に由来しているようだ。 
 
 一方、今月1日、メキシコ市で二人のナイジェリア人がメキシコ警察に逮捕された。容疑は偽のドル紙幣約100万ドル(約1億1400万円)を所持。警察では9月から監視していたという。フィリピンでも、5月に不動産購入を装って、業者から金をだましとるとしたナイジェリア人二人が逮捕されている。この際不動産業者を信用させるために、偽ドルが使われた。 
 
 ネット詐欺では、米国内に受け皿となるナイジェリア出身の大卒者集団の存在が指摘されているが、偽ドルをめぐっても、メキシコなどに、こうした支援組織がある可能性がある。 
 
▽ラゴスのネットカフェが発信地 
 
 米財務省所属のシークレット・サービスは、ナイジェリア詐欺団に手口に乗らないようにホームページで米国人に注意を呼び掛けるとともに、ナイジェリア政府も国内の詐欺団の摘発に協力を表明している、しかし、政治腐敗が常套化している中で、どこまで監視の目が届くのか、はなはだ心もとない状態だ。 
 
 「419号事件」が表面化してからも、ネット詐欺に引っかかる人はいるようだ。特に詐欺団がカモにするのが、主として白人の米国人。だまされやすいのだという。「419号事件」は、ナイジェリアでも社会現象になっており、事件をもじって作った歌のCDも現地で発売され、ヒットしている。 
 
 ネット詐欺の発信基地の一つが、ナイジェリアの首都ラゴスで盛んなインターネット・カフェ。夜中は、入り口のドアを閉め、明け方まで、店内で思う存分、ネット詐欺団が使う時間帯になっている。 
 
 19歳のサムエル君は、15歳の時にネット・カフェである詐欺団のリーダーにスカウトされた。「被害者が気の毒だとは思わない。白人は強欲だから」と、米紙ロサンゼル・タイムズに語っている。 
 
 1日500通のメールを送り、返信は大抵7通程度。しかし、返信してきた者からは、7割の確率で金がだまし取れるという。 
 
 サムエル君は昨年、仕事を辞めるまで月900ドルの収入があった。これは一般の人の所得の3倍にあたる。辞めたのは母親の反対。しかし、詐欺団のリーダーは、いつでも戻ってきていいと話しているという。 


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