2005年11月18日01時19分掲載  無料記事
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豪州の労使協定改正法案で大規模な抗議デモ 成立は時間の問題

 【サウスオーストラリア州アデレード17日=木村哲郎】労使協定改正法案、通称「ワークチョイス」に対する反発の声が高まる中、オーストラリア各地で15日、最大の労働組合、豪州労働組合評議会(ACTU)が計画した抗議デモが行われた。建設現場や工場などの労働者を中心としたこの日のデモには全国で50万人が参加し、デモ規模としては、35年前のベトナム戦争反対デモと、2003年に行われたイラク戦争反対デモに続くものとなった。 
 
 「ワークチョイス」は、現在6つの州にまたがる130の労使協定関係法を1つにまとめる法案。同法案は労使協定を簡素化することにより、最低賃金、年4週間の有給休暇、病欠を含む個人休暇、出産時を含む扶養者向け休暇、労働組合参加の自由などへの各保障を、現在の州レベルでなく連邦レベルで明文化することを狙っている。 
 
 ハワード首相は、「ワークチョイス」は昨年10月時の選挙公約であった強い経済のさらなる発展を推進させるため、生産力を高めて国際的な市場競争に打ち勝つために必要な法案と強調している。 
 
 これに対し労働組合と野党労働党は、「ワークチョイス」が可決された場合、最低賃金以上の給料が支払われることもなくなり、週末も働く必要が生じるとして、同法案に反対している。 
 
 また、同法案では時間外勤務の賃金率や休日、食事休憩に関しては個別交渉することになり、その場合、18歳以下の若年労働者が雇用主と対等な立場で個人労使協定を結ぶことなど現実的に不可能なため、雇用主に有利に働くだろうとしている。 
 
 さらに、週38時間を超える時間外労働に対しても、賃金率の上乗せを申し入れない労働者が優遇されることが予想されるため、労働者の「生活の質」が落ちることも懸念されている。 
 
 このためビーズリー労働党党首は、「ワークチョイス」の影響が将来にわたって多くの国民に悪い影響を及ぼすだろうと発言、同法案に反対姿勢を打ち出している。 
 
 労使協定改正法案は、与党保守連合(自由党・国民党)が今月10日、下院での討議打ち切りを提案、通過した。14日からは上院で5日間にわたる審議が始まったが、保守連合が両院で過半数を占めているため、法案の可決は時間の問題とされている。 
 
 ただ、与党内にも慎重に行動すべきだとの声が出ているが、昨年10月の国政選挙に大勝したハワード首相は発言力を強めており、労使協定改正法案の成立を「長年の夢」とする同首相の勢いの前では慎重論もかき消されている形だ。 


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