2005年11月19日19時02分掲載  無料記事
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警官による犬への発砲目立つ米国 愛犬家から「行き過ぎ」の声

 犬に激しくほえられた警官が、身の恐怖を覚え発砲するケースが米国で目立っているという。しかし、飼い犬を失った人たちからは、警官の行為は「行き過ぎ」との批判の声も上がっている。米国愛護協会(首都ワシントン)も、「撃つ必要のないケースも多い」と指摘し、警官が犬の生態を学び、無意味な犬への発砲を回避すべきだと主張している。(ベリタ通信=エレナ吉村) 
 
 米紙プレス・エンタープライズによると、米カリフォルニア州ロサンゼルスに近いリバーサイド、サンベルナディノ両郡にある4つの所轄警察署のまとめでは、2000年から04年までの5年間で、警官が発砲した相手は、人より動物の方が多いことがわかった。 
 ある所轄警察署では、発砲件数は動物と人間が半数ずつだったが、残る3つの警察署では、動物7に対し人間3というところもあった。動物は大半が犬という。撃たれた犬がどの程度死亡したかどうかは明らかにされていない。 
 
 警察は、犬への発砲を正当防衛としている。リバーサイド郡警察のマイク・クック巡査部長は、人の生命が脅かされている場合、あるいは警官が犬に攻撃された場合には、警官の発砲は許されると発言している。 
 
 犬への発砲は、指名手配中の犯人が、警官が来るのを警戒して、番犬用に犬を飼うケースも多いこととも関係しているという。捜索の際は、警官も緊張しているために、犬にほえられると、思わず引き金を引いてしまうからだ。 
 
 同郡ではことし3月、強盗との報で現場に急行した警官が、間違って別の家に入ったため、5歳の犬にほえられ、発砲する事故が起きた。犬は幸いけがですんだ。飼い主は、犬は子ども好きで、見知らぬ者が近づかない限り、ほえたりしないと、発砲に驚いている。警察は謝罪をしていない。 
 
 5月には自動車修理工場で、警報アラームが鳴ったため、現場に急行した警官に対し、飼い犬が激しくほえたてたため、警官が3発発射し、犬は死亡した。アラームは誤作動だった可能性がある。飼い主は、警官がなぜペパー・スプレーを使用しなかったと反発している。 
 
 「犬が怖くては、(警官の)仕事には不向き」と飼い主は主張する。警察では、犬がほえ、攻撃的な行動を取ったための正当防衛と主張しているが、飼い主は損害賠償請求を検討している。 
 
 犬への発砲事件は、2003年にテネシー州で起きたケースが有名だ。同年1月不審車両と勘違いした警官が、乗っていた家族を誤認逮捕し、手錠をかけた。その直後、飼い犬が車から飛び出し、警官に向かってきたため発砲。犬は死亡した。この模様が、パトカーに装備されたビデオカメラに収録されていたため、警察への非難が殺到した。同州では、その後犬の扱いの教育を警官に行なっている。 
 
 動物愛護団体などでは、警官は、犬の行動についてもっと学ぶべきだと述べ、犬がほえるのは、必ずしも人間を攻撃するとは限らないと述べている。また警察に対し銃ではなく、スプレーのほか、棍棒や高周波を出す道具などの使用を提案している。愛護協会では、警察が犯人の隠れ家を捜索する際、事前に犬がいないかなどをチェックし、もしいる場合は、訓練士らの現場同行も考慮すべきではないかと述べている。 


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