2005年11月19日19時11分掲載
無料記事
http://www.nikkanberita.com/print.cgi?id=200511191911066
FOXニュースをセクハラで訴える ブッシュ政権支援のTV局で相次ぐ反乱
米国の保守系メディアとして急成長した24時間ケーブル局FOXニュースがこのほど、雇用機会均等委員会(EEOC)から、元女性社員に対するセクシャルハラスメント(性的嫌がらせ)で、ニューヨーク・マンハッタンの連邦地裁に訴えられた。FOXニュースは「フェア・アンド・バランスト(公平でバランスの取れた)」が局のキャッチフレーズ。同ニュースには、昨年も元女性スタッフが、セクハラ訴訟を起こしたことがある。公正さを売り物にする局だけに、今回も元身内からの反乱に対し「根拠なし」と強気の反応を示している。(ベリタ通信=有馬洋行)
訴えによると、FOXニュースの宣伝担当副社長ジョー・チレミ氏は、複数の女性職員に対して「わいせつな言葉を投げかけた」ほか、職場で男性と女性を選ぶなら、男性を選ぶと発言。その理由は、女性は妊娠し、職場を離脱するからだと述べていた。このほか、女性社員を低く扱い、女性に対しては恒常的に契約社員とするなど、安定した仕事に就かせなかった。
ウィラーさんから被害報告を受けたEEOCは、女性に対する差別的な環境を作ったとしてFOX側を提訴。FOX側に対し、職場環境の改善と、ウィラーさんへの損害賠償を求めている。
これに対し、FOX側の弁護士スチーブン・ミンツ氏は、ニューヨーク・タイムズ紙などに、「申し立ては法的根拠がない」と反論。チレミ氏が悪い言葉を使ったかもしれないが、これはセクハラや差別に当たらない弁明している。
FOXニュースは、世界のメディア王と呼ばれるルーパート・マードック氏が統括するニュース・コーポレーションの傘下にある。FOXニュースは1996年10月から活動を開始、「フェア・アンド・バランスト」を売り物にしているが、イラク戦争では、ブッシュ共和党政権の“援護役”を務め、公正さを欠くとして批判されたりしている。
しかし、米国内の保守化の波に乗って、わずか数年でライバルのCNNに匹敵する視聴者を集めている。この結果、他局が、「共和党支持・敵対的な報道スタイル」を真似た右寄りの番組を作るなど、メディアの世界に「FOX化現象」が起きる要因になった。
日常的なニュース内容を統括するのは、マードック氏の片腕である、最高経営責任者ロジャー・アイレス氏。同氏は、米誌USニューズ・アンド・ワールド・リポートの10月特別号で、「米国の最良の指導者の1人」に選ばれている。
一方、FOXニュースのセクハラ訴訟をめぐっては、同ニュースの看板キャスター、ビル・オーライリー氏が昨年、元女性プロデューサーからセクハラで約6000万ドルの損害賠償訴訟を起こされたことがある。
オーライリー氏は、年間契約料が700万ドル(約8億円)以上といわれ、意見を異にする相手を容赦なく叩き潰す「敵対的な対談スタイル」の元祖的存在。同氏も直ちに相手側を逆に提訴。相手の提訴を「私が経験した最も邪悪なもの」と発言、怒りをあらわにした。
しかし、双方ともその後、提訴を取り下げた。被害を受けた女性プロデューサーは、オーライリー氏のわいせつな言葉を録音していたと発言していたが、訴訟の取り下げで、すべてがうやむやになっている。
Copyright (C) Berita unless otherwise noted.
日刊ベリタに掲載された記事を転載される場合は、有料・無料を問わず、編集部にご連絡ください。ただし、見出しとリード文につきましてはその限りでありません。
印刷媒体向けの記事配信も行っておりますので、記事を利用したい場合は事務局までご連絡下さい。