2005年11月28日17時56分掲載  無料記事
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売れっ子モデルの獄中体験は駄目 豪首相らが異例の圧力

  インドネシア・バリ島で麻薬所持罪により投獄され、このほど刑期を終えて帰国したオーストラリアの有名モデル、ミシェル・レスリーさん(24)に対し、ハワード豪首相やダウナー同外相らが一斉に、「投獄中の体験などをメディアに暴露すべきではない」と、強い圧力をかけている。レスリーさんが体験を暴露し、仮にインドネシアの司法制度を批判するような形になれば、外交関係に悪影響を与えかねない。インドネシア国民の対豪感情も悪化する可能性もあり、今回の異例ともいえる暴露“禁止令”になったようだ。(ベリタ通信=都葉郁夫) 
 
 オーストラリア人とフィリピン人の血を引くレスリーさんは、大手下着メーカーや有名ブティックなどと契約していた売れっ子モデルで、ニューヨークでも活躍中だった。その華麗な日々が暗転したのが今年8月20日、リゾート地バリ島クタ地区でのことだった。 
 
 ダンスパーティーに出ようと車に乗っていたところを、地元警察官の検問を受け、持っていたバッグ内から、インドネシアでは非合法の合成麻薬「エクスタシー」錠剤2個が見つかり、逮捕された。 
 
 有罪となれば最長で禁固15年が下される可能性があったレスリーさんは、イスラム教の女性信者が身に着けるベール・ジルバッブ姿で出廷、エクスタシー所持を率直に認めるとともに、「インドネシアの人たちに大変な迷惑をかけ、申し訳ありません」と涙の証言。裁判官や検察側に好印象を与え、有罪でも短い刑期で済むように狙った戦術に出た。 
 
 その戦術のためか、あるいはインドネシア企業と取引のある大会社の御曹司が恋人だったためか、11月中旬の判決公判では有罪となったものの、下されたのは禁固3カ月の刑。逮捕後、既に3カ月近くを拘置所で過ごしていたことから、残りの「刑期」はわずかで、レスリーさんは判決から約1週間で拘置所を後にした。 
 
 自由の身となったレスリーさんだったが、放って置かなかったのがオーストラリアのメディア。22日、シドニーに戻った際には報道陣が大挙して押しかけ、空港ロビーは大混乱に陥った。 
 
 報道陣の関心のひとつが、レスリーさんがいつ、どのように、そしていくらで「獄中体験」をメディアに暴露するかだったが、レスリーさんは「疲労困ぱい」を繰り返し、たった26秒間の会見をしただけで、恋人らと共に空港から急いで姿を消した。 
 
 こうした大騒ぎを懸念したのが政府や元法曹関係者たちで、中でもハワード首相は訪問先のパキスタンから「彼女が体験を売り物にし、金もうけをするとは思わない」とわざわざ釘を刺した。 
 
 さらに、ダウナー外相も「罪を犯し、裁かれ、禁固3カ月の刑を受け、ようやく帰国できたこと以外、彼女は口にすべきではない。置かれた立場をよく理解した上で、口を閉ざし、元の生活に戻るべきだ」と追い打ちをかけた。 
 
 テレビ出演した元連邦裁判事も「彼女はインドネシアを侮辱するような発言、手記発表を慎むべきだ」とし、続けて「彼女が口を開けば、現在同様の罪で裁判を受けているオーストラリア人被告や今後の同様ケースに不利に働く」と警告した。 
 
 首相らの警告にレスリーさんがどのような答えを出すかは分からないが、首相直々の警告もあってか、報道界の中には「手記」獲得レースからの撤退を早々に宣言する雑誌社が出ている。 


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