2005年12月02日15時02分掲載
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比警察が予算不足で銃購入できず 自前調達認める異常事態
フィリピン・マニラ首都圏の金融街マカティ市などで目に付くのが、銀行をはじめとする事務所、ショッピングモール、さらには飲食店の警備を担当する民間のガードマンたちがけん銃どころか、散弾銃などで武装している姿。同国では米国も顔負けの「銃社会」が幅をきかせている。ところが、治安を維持し、市民生活を守る肝心のフィリピン国家警察では、予算不足から、警官の任務遂行に欠かせぬけん銃の購入・支給ができないという前代未聞の事態が起きている。(ベリタ通信=都葉郁夫)
同国議会のロランド・アンダヤ下院議員はこのほど、同下院歳出委員会で、国家警察の年間予算の大半が給与などの人件費で消えてしまい、任務遂行に必要な用具・備品購入が滞っていると暴露した。
中でも、深刻なのはこの予算不足が原因となり、治安のよくないフィリピン社会で、国家警察が市民の日常生活を守る警官たちに支給すべきけん銃を購入、支給できないでいること。
アンダヤ議員によると、2005年度の警察予算は356億ペソ(約700億円)だったが、このうち約90%に上る322億ペソ(約640億円)が人件費として支出される。残りのわずか34億ペソ(約65億円)のみが備品や車両購入などに使われる。
この結果、警察官11万7千人のうち約19%に相当する2万1204人に、武装、護身用のけん銃が支給されていない。つまり、警官の6人に1人がけん銃を支給されていないことになる。
強盗、殺人、誘拐など銃器を使った犯罪が多い中、これでは凶悪事件の取り締まり当たる警官たちは文字通り“丸腰”状態で任務に就くことになってしまう。
そこで警察本部が今、警官たちに奨励、許可しているのが「自前での銃購入」だ。また、たとえ支給されていても、旧式で安全性に不安のある銃もあることから、支給されたけん銃を使わずに、自ら気に入ったけん銃を購入、所持している警官も多い。
「新型コルトけん銃入荷」といった広告も新聞に掲載される国柄だけに、警官たちがけん銃を購入しようと思えば、別に困ることはなく、中には口径の大きく強力なけん銃で“武装”する者もいる。
こうした変則的に銃社会を繁栄してか、マニラ首都圏をはじめフィリピン各地ではけん銃を使った犯罪がほぼ毎日発生しており、先月末には、同首都圏だけで1夜に車両窃盗団メンバーら4人が警官に射殺される騒ぎがあった。警官がけん銃強盗などに豹変、悪事を働くケースもまれではない。
国家警察の予算不足の余波はけん銃購入だけではなく、警察署が使う巡回用および事件現場に急行する車両、さらには水際作戦に使うパトロールボート、さらには燃料用ガソリンの購入などにも及んでいる。
車両の場合、不足数は1万4700台にも上っているほか、書類上に記載されている車両でも約7000台は廃車同然で、全く使い物にならない状態にあるという。このため、事件が発生しても現場に急行する“足”がないため、捜査にも大きな影響が出ている。
アロヨ政権は今月1日から新付加価値税増税法を施行し、国庫収入増を何とか図ろうとしている。しかし、赤字続きの国家財政が急激に改善する見通しはない。たとえ歳入が増えたとしても、それが有効に使われる保証もない。予算不足に悩む国家警察の警官たちによる「自前でのけん銃購入」は今後も続きそうだ。
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