2005年12月02日15時04分掲載  無料記事
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米ラジオ局ホストが妻を毒殺、生放送中に逮捕 メディア関係者に衝撃

 米ミズーリ州の州都ジェファソンシティにあるラジオ放送局で今月7日朝、生放送中にホスト役の男性が、妻を毒殺した疑いで逮捕された。スタジオ内に現われた捜査官たちに驚くスタッフを尻目に、その男性が言い残した言葉は、そばにいた同僚に「(ちょっと仕事を)カバーしてくれるか」だった。ラジオの生番組中に逮捕されるのはあまり例がなく、メディア関係者も驚きが隠せない。このホストの男性は、保険金を詐取する目的で、妻に有毒物質を盛り、衰弱死した疑いがもたれている。(ベリタ通信=苅田保) 
 
 容疑者は、同州出身のジェームズ・クオン(31)。ジェファソンシティのKLIK−AM局の朝の番組を担当していた。クオンは2004年9月にマサチューセッツ州ウォールサムで、妻ジュリーさん(31)に不凍液に使うエチレングリコールを食事や飲み物に混ぜて殺害した。今月3日にマサチューセッツ州の大陪審から第一級殺人で起訴されていた。 
 
 コロンビア・ミズーリ・トリビューン(電子版)などによると、クオンは2004年の春ごろ、ミズーリ州西部のカンザスシティから東部のマサチューセッツ州ウォールサムに、妻を説得して移転した。理由は、マサチューセッツ州にある名門ハーバード大学ビジネス・スクール(経営大学院)に通学することだった。 
 
 しかし、これは真っ赤なうそで、同大学に通ったのは事実だが、単に社会人に開放している講座の1単位取ろうとしただけだった。この1単位も結局取れずに終わっている。 
 
 このころ、二人の銀行口座の残高は赤字になっていたという。そうした中で妻ジュリーさんはマサチューセッツ州に移転した04年5月ごろから体の不調を訴えるようになった。捜査当局では、この頃からクオンが、有毒物質を使って妻を次第に衰弱させ、妻の保険金25万ドル(約2870万円)をだまし取ろうとしたとみている。 
 
▽保険会社も調査 
 
 8月末に妻は容体が悪化し、病院に緊急搬送された。腎臓が悪くなっており、妻は当時、知人に腎臓移植が必要だと話していた。いったん自宅に戻ったが、9月4日病状が悪化し、病院に運ばれたが、意識不明のまま4日後に死亡した。 
 
 病院が死因に不審を抱き、マサチューセッツ州当局が検死解剖を行なった結果、4日に病院に運び込まれる前の8〜10時間前に、致死量を超すエチレングリコールを過剰摂取していたことがわかった。警察当局は事件後1年間以上にわたり捜査を行って容疑を固めた。同当局は、殺害の現場がマサチューセッツ州のため、クオンが働いてた米ミズーリ州まで捜査官を派遣、地元警察の協力を得て、ラジオ局内でクオンを逮捕した。 
 
 一方、妻の保険金は、保険会社も独自に調査に乗り出していたため、クオンには支払われていない。捜査当局は、妻ジュリーさんは、自分が愛する夫から、毒を盛られていたことを知らないまま、死亡したとみている。 
 
 クオンとジュリーさんは、カンザスシティにあるカレッジの同窓生。クオンを知るメディア関係者は、外向的な性格で仕事熱心だったと評し、今回の事件に衝撃を受けている。 


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