2005年12月04日10時25分掲載
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靖国神社問題
駐日韓国大使が小泉首相の靖国参拝を批判 同志社大学講演で
韓国の羅鍾一(ナ・ジョンイル)駐日大使は11日25日、同志社大学で行った講演会で、聴衆の質問に答える形で、「総理が本当に信念を持って靖国神社へ行くのだとしても、責任ある立場の政治家はそんなことをしてはいけない」と、小泉首相の靖国参拝を批判した。(京都・森類臣=日刊ベリタ)
講演会は「韓日関係と東アジア協力」をテーマに、同大学現代アジア研究センターが主催。大学生だけでなく高校生から年配者まで幅広い年齢層の約50人が参加した。
羅大使は、まず韓国の民主化について、「個人的に誇らしく思うことは、わが国の人々が自らの力で、軍事独裁の遺産と植民地時代から受け継いだ軍事主義文化を克服して、民主化を果たしたこと」「韓国の新しい世代が、民主化の努力の過程で、とても創意的・躍動的で、そして民主的な価値をとても大切にすることができる新しい世代として生まれたことに非常に希望を感じる」と述べた。
また、朝鮮民主主義人民共和国(以下、朝鮮)と韓国の関係については、「私たちは、北韓の問題あるいは北韓によって引き起こされるこの地域全体の不安定の要因を、近代化の過程での不均衡だと思っている。これをきちんと管理しなければ、根本的な問題解決にならない」として、韓国が朝鮮に対して融和政策をとることについて理解を求めた。
講演終了後の質疑で、独島(ドクト、日本名・竹島)問題について羅大使は、「日本は1905年に、独島が自分の領土だと宣言した。その年は、日本が強制的にわが国の外交権を剥奪した年でもある。現在において日本が独島を日本の領土だと主張をする場合、韓国側は百年前への回帰だと思ってしまう。これが、独島問題が韓国で大きく反響を呼び起こす原因だ」と述べた。
「靖国参拝問題をどう考えるか」という高校生からの質問には、「日本の責任ある人物は、靖国を参拜しながら、本人の所信の問題だ、 平和のために行くのだ、 戦争時に犠牲なった人の魂を慰めるために行くのだ、 と言う。しかし、その説明には説得力がない。靖国神社は、戦争で惨めに犠牲にされた人々のための記念物と言うより、犠牲者たちを戦争に駆り立てるための記念物です。靖国神社には遊就館という戦争記念館があります。そこに行ってみれば、靖国の哲学や原則がどのようなものか、たちまち理解できます」と、靖国神社の持つイデオロギー性に言及した。
その上で、小泉首相の靖国参拝について「総理が本当に信念を持って靖国神社へ行くのだとしても、責任ある立場にある政治家はそんなことをしてはいけない」「(靖国神社は)まともな外国の指導者なら誰ひとりとして行くことのできない所」「(総理は)自分のする行動が、日本の軍国主義によって犠牲にあった人々にどんな影響を与えるかを考えなければいけない。それだけではなくて、日本内部の過去回帰的な一部の反動的な要素にどんなメッセージを与えているのかも考えなければならない」と批判した。
最後に「第二次大戦中、太平洋で経験した不幸な経験、 韓国や中国人や日本の人々が皆経験したこの悽惨な経験を繰り返さないように、 日本の人々が健全な判断をすると信じる」と聴衆に訴えた。
共同通信の配信記事によると、この講演翌日の26日、麻生太郎外相は金沢市内の講演で「靖国の話をするのは世界で中国と韓国だけ。ほかから言われたことはほとんどない」「日本が孤立しているとか、好かれていないとか、どうでもいいことは気にしなくていい」と述べたという。羅大使のような思考が、麻生外相には全く欠落している。
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*羅鍾一大使のプロフィール
ソウル大学校政治学科学士・修士取得後、英ケンブリッジ大学トリニティーカレッジで政治学博士取得。慶熙大学校教授・学長を経て、金大中政権時に、国家情報院次長・国際平和戦略研究院長などを歴任。現政権では、駐英大使を経て現職。
著書、論文:『準備、新たな千年のために』、『社会の葛藤そして和解』(啓明大学校出版部、2002)など多数。
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※韓国語翻訳には、同志社大学大学院の李其珍さんの協力を仰いだ。
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