2005年12月06日18時33分掲載  無料記事
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中国人スパイ視に反発の声 FBIが権利を乱用?

  中国脅威論が主流になっている米国で、中国系米国人の間から、米連邦捜査局(FBI)の捜査の行き過ぎを憂える声が目立っている。捜査・検察当局が、中国系住民をスパイ容疑で逮捕したものの、その後の調べで、スパイとしての立件に失敗するケースが多くなっているためだ。スパイは重罪のため、慎重な法の適用が要求される。それだけに中国系社会は、FBIが確たる証拠もないまま、強制捜査に着手しているのではないか疑問を呈し、捜査当局の「権利の乱用」を懸念している。(ベリタ通信=有馬洋行) 
 
 ことし10月末、FBIは中国系男女4人によるスパイ事件を摘発した。米国内の軍事関連会社から米海軍の潜水艦情報などをコンピューターから盗み出し、中国政府に渡す計画だったとされた。その後1人は、スパイ事件の嫌疑から外された。 
 
 米ロサンゼルス・タイムズなどによると、米カリフォルニア州の連邦起訴陪審は今月中旬、被告3人に対し、スパイでの嫌疑を外し、はるかに軽い罪で起訴した。起訴された罪は、外国政府に対する代理人登録を怠ったというもの。 
 
 スパイが認定されれば、最高で25年の禁固刑になるが、代理人登録違反は最高でも10年と短い。結果的に検察当局は、スパイ事件を立件できず、大きな黒星となった。 
 
▽中国系社会は憂慮 
 
 この事件では、米カリフォルニア州アナハイムの国防関連会社から、中国系の主任技術者が、潜水艦の機雷技術や電磁砲弾システム、核攻撃を事前に探知する早期警戒技術などの情報をCDを使って盗んだとされている。このCDは仲間が中国に携帯して運ぶ予定だったとされるが、その後の調べで、機密情報ではなかったと認定されている。 
 
 米国の中国系社会は、伝統的に「権威」に対して礼節を守る傾向がある。しかし、今回の事件について、中国系米市民連合のウェン・リサ・ヤン会長は「FBIや検察官が中国系住民に対して行なったここと残念に思う。権利の乱用と思わせるものだ」と話している。 
 
 中国系社会は、本土中国の経済躍進が目立つ中で、米国内で中国への脅威論が高まっていることに神経質になっている。また中国脅威論と符合するかのように、中国系住民がスパイ事件に巻き込まれることにも憂慮している。 
 
 1999年にロスアラモス国立研究所に勤務していた中国系の核科学者ウェン・ホー・リン氏が、核に関する情報を中国側に渡していたとするスパイ事件が発覚した。 
 
 しかし、同氏は、結局スパイ事件とは関係のない、機密ファイルの扱いミスという軽い罪で有罪になっただけ。この事件にショックを受けた中国系社会は、米政府が中国系住民を不当に扱っているとの思いを強くしたという。 
 
 一方、経済、国防力を充実している中国政府が、外国の最先端情報をほしがっているのも事実とみられ、米国では97年にロサンゼルスの物理学者が、中国で科学者に軍事情報を講義していたことがわかり、有罪になっている。またことし9月には、米ニュージャージー州で、4人の中国系住民が、中国政府が管理する研究施設に軍事機器を送ろうとした罪で有罪になっている。 


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