2005年12月08日09時46分掲載
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寄付のしすぎで「チャリティー疲れ」? 自然災害の多発で米市民
昨年末からことしに入り、世界中で自然災害による被害が目立った。被害が起きるたびに、世界から善意の募金が送られてくるが、世界有数の豊かな国、米国で“チャリティー疲れ”の現象が起きているという。過去12カ月間で、米国人(成人)の5人のうち4人以上が、何らかの寄付をしたといわれるが、ことしは地震、津波、ハリケーン被害など相次ぎ例年になく、寄付をする機会が増えた。歳末を迎え、寄付金に対する財布のひもが固くなっているようだ。(ベリタ通信=江口惇)
米紙ロサンゼルス・タイムズなどによると、米国内では、昨年末に起きたインドネシア地震・津波被害の際、16億ドルの寄付金が集まった。インドネシアの地震・津波では、20万人が死亡し、メディアを通じて悲惨な被災地の状況が、逐一テレビの画面などを通じて流された。インターネット募金も大活躍し、米国内からすばやく寄付金が集まった。
ことし8月末に米南部を襲った超大型ハリケーン「カトリーナ」などの一連の被害では、27億ドルを集めた。
▽パキスタン地震の寄付不調
しかし、10月にパキスタンを襲った地震では、寄付金の集まりが鈍く、米国内での募金集めにブレーキがかかり始めた。いまのところ寄付金額は4300万ドルにとどまっている。この寄付金額は、インドネシア地震・津波被害への寄付総額の4%足らずだ。この地震では8万7000人が死亡し、冬場を迎え多数の人々が被災地で依然厳しい生活を余儀なくされている。
米国内では11月末の感謝祭からクリスマス、新年にかけて、多額の寄付金が集まるシーズン。米国人の寛大さを示す一種の社会行事として定着している。温かい食事をホームレスの人々に長年無料で提供することを続けている人もいる。
しかし、ことしは相次ぐハリケーンの来襲や、世界各地の被災地への寄付が先行したことや、国内的にはガソリン価格の高騰で、庶民の懐状態は必ずしもよくない。この結果、米国内の貧困者、ホームレスの人々などに回る寄付金が減少する状況が起きている。
米北西部モンタナ州の慈善団体では、年末にかけて例年より5−10%程度、寄付が減ると予想している。ある関係者は「献金者が疲れたというより、(寄付のし過ぎで)手持ちの現金が底をついたのだと思う」と話す。
ロサンゼルス・タイムズ紙では、10月から12月にかけて、国内の生活困窮者らへの寄付金が、インドネシアの地震・津波被害や、ハリケーンを理由に、減少する可能性に言及。しかし、献金疲れを口実に国内の貧困者支援を忘れてはならない、と呼び掛けている。
一方、ウォールストリート・ジャーナル紙などの最近の調査では、過去12カ月で米国成人の83%がなんらかの寄付をしている。困窮者に支援の手を差し伸べることを当然視する国民感情の反映といえる。
内訳をみると、年齢階層ごとに寄付者数が増え、55歳以上は、92%という高率になっている。寄付額は100ドル以下が全体の34%、500ドルまでが24%を占めている。1000ドル以上も22%に達している。
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