2005年12月14日13時48分掲載
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求む!気概ある医者、不足に悩む豪の州政府が大募集
シドニーを擁するオーストラリア南東部のニューサウスウェールズ州。この1州だけで、その面積が約80万平方キロと、日本に比べ2倍以上もある。その広大さもあって、州政府が抱える頭痛のタネのひとつが医療部門での人手不足。中でも現地でアウトバック(奥地)と呼ばれる地方では、医者不在の地区が出るなど深刻な状況が起きている。そこで州政府がこの窮状を改善しようと、「医者リクルート隊」を立ち上げた。リクルート隊は近く、英国とアイルランドを訪れ、「気概ある医者たち」の募集を開始する。(ベリタ通信=都葉郁夫)
シドニー・モーニング・ヘラルド紙によると、ニューサウスウェールズ州には、オーストラリアの総人口約2000万人の3分の1(約675万人)が暮らしている。しかも、このうち経済・金融・情報産業の中心地シドニー地域には約400万人が集中するなど、人口の都市偏重が顕著となっている。
人口がさらに増え続ける中、州政府が頭を痛めているのが、慢性的な医者不足問題。とりわけシドニーやニューカッスルなどの都市部を除く、先住民アボリジニの居住区など辺境地域での現状が深刻だ。
州保健当局者によると、「医者リクルート隊」の派遣先は、使用言語と文化を考慮し、歴史的に関係の深い英国のマンチェスター、エジンバラそしてアイルランドのダブリンに決められた。
今回募集する医者数は150人で、中でも地方勤務をこなせる若い研修医および定住可能な熟練医者を優先して集めたいとしている。必要とされる専門分野も精神科、麻酔科、産科、高齢者医療、小児科、外科など多岐にわたっている。
州政府側は、勤務期間として最低2年間を提示する予定だが、環境の厳しい地方に限っては1年間勤務も認めるなどの配慮も講じることにしている。
「医者リクルート隊」が今回、どのような成果を上げられるかは分からないが、地元紙は最後に、1年前に英国からシドニーの病院へやって来た若手の女性研修医ジェシカ・グリーンさん(27)の体験を次のように紹介している。
「給与は英国に比べて低いが、勤務時間が週40時間と極めて少なく、専門分野を学べる機会がある。食べ物もおいしいし、楽しみもいろいろある。契約期間をさらに1年延長する予定」
▽移民受け入れでも不足
元々、英国からの移民が建設したオーストラリアには、豊かな生活を求めて今も世界各地から移民が集まり、多様でユニークな文化が形成されつつある。医療部門では連邦政府が外国人医師の優先受け入れを決めるなど、早くから特殊知識・技術を持つ者=医者ら=に優遇措置を講じ、1996〜2001年の5年間だけでも医師免許を持つ外国人が4678人も移り住んだ。
多くが英国とアイルランドからだが、最近では、インド、中国、東南アジアといったアジアからの医者が目立っている。02〜03年の統計では、アジアからの医者が全体の40%を占めたが、問題はそうした医者のうち移住後、実際に医療活動を続ける者が約半数にとどまっていること。
医者の移住が即、人手不足の解消には結び付いていないのだ。さらに追い打ちをかけているのが国内で育った若い医者たちの米国などへの頭脳流出が増えていることだという。
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