2005年12月14日13時51分掲載
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国軍兵士に買春禁止を厳命、インドネシアがエイズ予防で
「国軍司令官命令で兵士による買春を禁ずる」―兵士たちの間にエイズウイルス(HIV)感染者が多く出ていることから、インドネシア国軍がこのほど、こんな禁止令を出した。特に買春禁止の対象になっているのが、同国最東端に位置するパプア州に駐屯する部隊の兵士たち。遠洋漁業の拠点港を持つ同州では、1990年代半ばごろから、外国人漁船員たちがエイズを持ち込んだとされ、それが買春を通じ国軍兵士たちの間にも広がったとみられている。(ベリタ通信=都葉郁夫)
12月1日の「世界エイズデー」に当たり、国連合同エイズ計画(UNAIDS)と世界保健機関(WHO)は、世界でのエイズ感染者総数が推定で約4000万人に達したと述べ、インドネシアに関しては、今後、効果的な防止対策が講じられないと、エイズがさらに拡大する懸念があると強く警告した。
インドネシアは世界で4位の人口約2億2000万人を抱える途上大国で、エイズ対策に失敗すれば、将来の経済発展にも支障を来たす恐れもある。それだけに、今回の「買春禁止令」によって、国軍兵士たちに対し、国民に手本を示すよう求めている。
同国政府は正確なエイズ感染者・患者数を把握していないが、全国で約8200人いると推定され、このうちパプア州だけで、国軍兵士を含め約2130人(うち患者932人)に達しているという。
▽感染者25万人との推計も
しかし、保健関係者や非政府組織は実際の数が25万人を上回っていると推測し、政府だけでなく民間団体も加わった、全国的なエイズ防止策推進が急務と警鐘を鳴らしている。
そこで飛び出したのが、今回の兵士たちに向けた「買春禁止令」。その中で国軍司令官は「兵士たちは買春行為をしてはならない」と厳しく禁じている。最大の対象は駐屯兵士中に48人もの感染者・患者が判明しているパプア州の国軍部隊「トリコラ師団」(本部:同州都ジャヤプラ)。
インドネシアからの分離・独立を主張する武装組織を抱えるパプア州に駐屯する同師団は、約1万人の兵士で編成されているが、国軍の広報担当者によると、同師団の兵士48人がエイズに感染し、このうち12人が既に死亡している。
さらに心配されているのが、エイズ感染の兵士家族たちへの拡大だが、国軍によると、感染した兵士の子ども2人と市民の計3人も既に犠牲になっているという。
国軍では今回の禁止令を徹底させるため、トリコラ師団など各師団内に「監視部隊」を編成、買春に走らないよう兵士たちの行動監視と取り締まりを強化することにしている。
保健関係者によると、パプア州内でエイズ感染問題が確認されたのは1990年代半ばごろで、エイズに感染していた外国人の遠洋漁業船員たちが州都ジャヤプラや同州最南東部にある港町メラウケへ上陸した際、買春などを通じて広がったとされる。
その結果、パプア州内の感染者・患者数は全国平均に比べて19倍も高く、専門家はその最大の原因は政府が同州でのエイズ拡大を知りながらも、予防知識の普及など適切な防止策を講じてこなかったからだと指摘している。
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