2005年12月19日20時04分掲載
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ハエが6500億匹も異常発生 メルボルンの美観台無し
南半球に位置するオーストラリアは今、夏の真っ盛り。自然に恵まれた同国では週末ともなると、澄み渡った青空の下、子ども連れの家族が美しい公園などに集まり、バーベキューなどを大いに楽しむ。ところが、地元メディアによると、同国南東部ビクトリア州では今年、この光景にちょっとした異変が起きている。原因は例年を上回って大発生したハエの大群が、自然を満喫しようとする市民たちを“襲撃”しているからだ。「公園都市」とも呼ばれ、美観を誇る州都メルボルンでも、顔などに執拗に群がるハエを追い払う市民の姿が多くなっている。(ベリタ通信=都葉郁夫)
オーストラリアでは例年、シドニーといった大都会でも、夏を迎えると大きなハエがどこからともなく姿を表し、粘膜のある口や鼻の中に突然飛び込んでくるのはそう珍しくはない。
ハエの群れは、現地で「アウトバック」と呼ぶ奥地へ入るほど規模が大きくなる。同国の大自然を象徴する有名な観光地で、世界遺産にも登録されているウルル・カタジュタ国立公園(北部準州)では、この時期、真冬の国からやって来る観光客たちを最も悩ませるのがハエの大群。
先住民アボリジニの聖地で、世界最大の一枚岩とされるウルル(英語名エアーズロック)を真夏に訪れる観光客はまず、群がるハエとの格闘を覚悟しなければならない。観光拠点となるリゾート地の店には、ハエの襲撃から顔・頭部を守るネット付き帽子まで売っており、外国人観光客の格好の土産品となっているほど。
ネット付き帽子で予防策を講じていても、ハエはちょっとしたすき間から入り込んで悩ましたり、背負った特に黒色のリュックなどに真っ黒になるほどに群がってくる。
今夏、こうしたハエの“襲撃”がビクトリア州でも起きている。昆虫博物館のバート・カンドゥシオ研究員によると、同州では今年、ハエが過去に例がないほどに大発生し、その数は何と6500億匹にも達しているという。
しかし、発生数を正確にとらえるのは難しいため、これでもまだ控えめな推測数といい、実際の発生数が6500億匹を上回っている可能性も大きいとされる。しかも大発生はハエにとどまらず、バッタなど他の昆虫にも起きている。
昆虫学者のサーカン・アラシャさんは、大発生の最大の原因として2年続きの猛暑と地中内の湿気の高まりを挙げ、これらがハエのふ化には最適な条件を作り出していると指摘。その上で、「ハエのふ化スピードがあまりにも速すぎるため、ハエを餌とするクモなどが捕食しても減らず、お手上げの状態だ。大発生はまだ続く」と、不気味な予測も示している。
それに加え、この夏は北からの熱風がビクトリア州内に流れ込んでいるため、クイーンズランドとニューサウスウェールズ両州でふ化したハエがこの熱風に乗って、群れを成してビクトリア州に流れ込む最悪状態に見舞われているという。
ハエ対策についてカンドゥシオ研究員は「この大発生状況では、当面、打つ手なし。がまんするだけ」と市民に忍耐が肝心と訴える一方で、「乾燥した天気が続くようになれば、ハエは自然に少なくなる。同時に、ハエを食べるクモなども数を増やし、ハエの数を減らしてくれる」とみている。
と言っても、部屋などに入り込むハエの大群に「もうがまんできない」という市民には、侵入を防ぎたいのなら、ハッカやヨモギそれにセージ(薬用サルビア)を入れたたらいを窓近くに置くこと、また、外出の際には、ハエが嫌がる色とされる黄色の服や帽子を着ければ、多少はハエの“襲撃”から身を守れるかもしれないという。
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