2005年12月19日20時11分掲載
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中東
反戦組織がヒラリー議員に集中砲火 駐留米軍のイラク撤退で
民主党のヒラリー・クリントン上院議員(58)が、リベラル(左寄り)の反戦組織「CODEPINK」などから、対イラク戦争に対する態度が煮え切らない、と激しい攻撃を受けている。同議員は、イラク駐留米軍の撤退時期の設定には消極的な姿勢をみせるなど、米軍の即時撤退を叫ぶリベラルの組織と、意見の相違が顕在化している。反戦組織は、ヒラリー議員が好戦的な姿勢を改めなければ、08年の大統領選挙で、民主党が政権を奪取するのは難しくなると警告している。(ベリタ通信=江口惇)
各種報道を総合すると、ヒラリー議員が今月初め、シカゴの高校で開かれた講演会に出席した際、会場内にいた「CODEPINK」のメンバーらが「今すぐイラクから撤退せよ!」などと叫び、抗議。講演会が一時中断した。「CODEPINK」は、ヒラリー議員が行くところには、どこまでも追いかけて抗議すると明言している。
「CODEPINK」は女性が音頭を取って作られた草の根の反戦組織。これまでイラクやヨルダンなどにメンバーを派遣し、ピンクのTシャツなどを着ながら、積極的な反戦運動を繰り広げている。
リベラルな組織は、民主党の支持母体の一つだが、ヒラリー議員が、当初、ブッシュ政権の対イラク開戦を支持、未だにイラク戦争を「間違いだった」と認めないことに、苛立ちを深めている。「CODEPINK」の責任者らは「煮え切らない態度はやめにして、部隊を帰還させる仕事に着手すべきだ」と指摘している。
ヒラリー議員は11月に長文のメールを支持者に送り、イラク戦争に関する自分の考えを明らかにしたが、02年の武力行使決議に賛成したことを「間違い」とは認めず、駐留米軍の即時撤退にも、「イラクでやるべき仕事が残っている」として反対する立場を示した。
このメールの特徴は、ブッシュ大統領のイラク戦争の運営を批判しながらも、米軍の撤退時期の設定には反対し、どっちつかずの内容になっていることだ。
民主党は、08年に実施される大統領選挙で政権奪取を目指しているが、ヒラリー議員はその最有力候補の一人。しかし、このヒラリー議員のメールに対し、即時撤退の要求を強めているリベラルの反戦組織が反発、ヒラリー批判が高まる結果になった。
“戦死兵士の母”と呼ばれ、ブッシュ大統領批判を急先鋒のシンディ・シーハンさんも、ヒラリー議員の煮え切らない態度を批判している。同議員は06年に上院議員の再選時期を迎えるが、シーハンさんは、同議員を支持しないことを公言している。
一方、米国内では、「ブッシュ大統領が、対イラク開戦をめぐり間違いを犯したにせよ、米軍がイラクから現状のままで撤退するのは無責任」という世論が大勢を占めている。
大統領選挙を意識しているヒラリー議員にとっては、リベラルの考えに乗って反戦を声高に叫べば、こうした世論と逆行することになる。大統領選では、広範な支持が必要とされるだけに、同議員の姿勢は、08年を意識した長期的な戦略の一環ともいえそうだ。
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