2005年12月20日14時37分掲載
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比国民の3人に1人が海外移住希望 背景に政府への失望感
外国で働き、本国の家族などに外貨を送金する海外就労者を、フィリピン政府は「現代のヒーロー」と呼び、たたえている。その数は約800万人と、全人口の1割にも達する。大規模雇用につながる基幹産業に乏しい同国では、国民生活を支える手段のひとつが海外就労になっているわけだが、それにも増して国民の実に3人に1人が祖国を離れ、外国の地で生活をやり直したいという「海外移住希望者」であることが、最新の世論調査で分かった。その背景には、政治および経済分野で成果を上げられないアロヨ現政権への失望感の高まりがある。(ベリタ通信=都葉郁夫)
フィリピンの海外就労者が送金する外貨総額は昨年で約80億ドル(約9440億円)にも達し、これが残った家族たちの生活を支えているほか、政府にとっては貴重な外貨収入源にもなっている。
労働雇用省などによると、送金される外貨総額はここ数年、年を追うごとに増えており、2005年には約90億ドル、06年には待望の100億ドルの大台突破も可能とみられる。
そうした中、民間の調査機関パルス・アジアは国民の生活実態や海外移住などに関し、10月15〜27日に実施した世論調査(対象:18歳以上の男女1200人)の結果を発表した。
それによると、「海外移住を希望する」と回答したのは、前回調査(同年7月)の26%から7ポイントも上回る33%に上昇し、3人に1人がフィリピンを離れ、海外へ移住する可能性を求めていることが分かった。
「決めていない」も30%(前回比9ポイント増)となっており、移住希望予備軍も多いことが明らかになった。これに対し、「フィリピンに残る」との回答は37%にとどまり、前回の同51%に比べ大幅に低下した。
「移住希望」との回答者を年齢別にみると、18〜24歳では45%とトップ、次いで25〜34歳、35〜44歳および55〜64歳が各33%、45〜54歳が26%、65歳以上が23%となり、将来に夢を持つ青年層や働き盛りの年齢層に「移住希望」が高いことが分かった。
▽移住希望は貧困層に限らず
また、年齢に関係なく生活にある程度余裕を持っている層で、「移住希望」が49%とほぼ半数に達していることから、移住が必ずしも貧しさから抜け出すための手段ではないことも判明した。
さらに、「2006年の生活はどうなると思うか」との質問に対し、「よくなる」の回答はわずか18%にとどまり、「悪くなる」「変わらない」がそれぞれ58%、21%で、先行きに悲観的な見方が強かった。
今回の結果についてパルス・アジアは、「海外移住希望者」がこれまでになく増え、同時に「(将来の生活が)悪くなる」も上昇していることに注目し「現状に希望を失っている者たちが確実に増えている」と指摘するとともに、「アロヨ政権下で続く深刻な政治混乱、経済の低迷それに治安悪化などが影響している」とその背景を分析している。
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