2005年12月20日14時44分掲載
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カナダ首相の米国叩きに大使が異例の警告 背景にイラクめぐっての関係冷え込み
カナダが、対イラク戦争をめぐって米国批判を展開していることなどから、両国関係が冷え込んでから久しい。カナダのマーティン首相(自由党)は目下、来年1月23日に実施される総選挙戦の真っ最中で多忙だが、米国批判の舌鋒は緩んでいない。これに業を煮やした米国のデイビッド・ウィルキンズ駐カナダ大使が、これ以上“米国バッシング”を続けると、両国関係にひびが入ると異例の警告をする事態になった。しかし、マーティン首相は、これには動ぜず、わが道を行く姿勢をみせている。(ベリタ通信=エレナ吉村)
米国の北の隣人であるカナダは、米国の長年の同盟国であり、北米自由貿易協定(NAFTA)を通じても主要な貿易パートナーである。ところが、ブッシュ大統領の誕生で、両国関係は年々気まずさを増している。
各種報道を総合すると、イラク戦争以外にも、カナダは、米国がカナダ産の木材輸出に不公平な関税を課していることに不満を募らせている。また先月、モントリオールで開催された地球温暖化防止の国際会議では、議長国のマーティン首相が、京都議定書から離脱している米国を批判、温暖化防止に動く世界の声に耳を傾けるべきだと指摘した。
選挙戦に入ってからもマーティン首相の米国批判はエスカレートする一方。これには、ウィルキンズ駐カナダ大使も遂に堪忍袋の緒が切れたのか、オタワの講演で、選挙戦術かもしれないが、米国批判はほどほどにすべきだと警告。「気候変動をめぐっては、米国は、米国批判をする国々より、はるかに進んだ取り組みをしている」と反論した。
外国大使が、駐在国の国内政治に絡んで発言するのは異例だ。ウィルキンズ大使は、マーティン首相を名指しでは批判しなかったが、米政権が、一連の批判に対し、かなり苛立ちを深めているのはまず間違いないようだ。
▽「カナダを守るため」と首相
これに対し、マーティン首相は、友人(米国)が自分の言う事を気に食わないということは、よくある話だと、気にするそぶりをみせない。木材関税や気候変動にせよ、これはカナダを守るためであり、誰にも文句を言わせないと強調した。
カナダでは、マーティン内閣のマクレラン副首相が今月初め、ブッシュ大統領の強力な支援組織である全米ライフル協会(NRA)を批判するなど、両国関係は、ウィルキンズ大使が指摘するように「危険な坂道を転げ落ちる」状況になりつつある。
NRAは銃規制に反対する政治的圧力団体だが、マクレラン副首相によると、野党保守党の候補者を当選させるために、NRAがカナダの政治に“干渉”しようとしている動きがあるという。
最近トロント市などで銃を使った殺人事件が相次いだ。この事態を重視したマーティン首相は、選挙戦の最中の今月、自由党が今回の選挙で勝利したら、銃の所持を禁止するとの公約をぶち上げた。これも銃規制に反対する立場のブッシュ政権には、カチンと来る動きでもある。
マーティン首相は、銃をめぐっては、米国内から銃が密輸され、カナダ国内で犯罪に使われていると、間接的に米国批判を続けている。
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