2005年12月20日15時59分掲載
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売り場から姿消したウイスキー、ジャカルタ版“禁酒法”で
世界第4位の人口(約2億1800万人)を持つインドネシア、その首都ジャカルタ市(特別州)で今、ウイスキーやワインをはじめ、比較的強い酒類がスーパーマーケットなどの売り場から一斉に姿を消しているという。インドネシアは人口の9割がイスラム教徒だが、仏教など信仰は自由。イスラム教の断食月中を除けば酒類を楽しむ同教徒は多く、首都でもウイスキーやワインなどの店頭販売は認められていた。それだけに、ジャカルタに住む酒好きの外国人たちや地元民は、今回のジャカルタ版“禁酒法”に戸惑いを隠せないようだ。(ベリタ通信=都葉郁夫)
英字紙ジャカルタ・ポスト(電子版)によると、ジャカルタ特別州の産業貿易局はこのほど、地元および海外資本系を問わず、スーパーマーケットなどにウイスキーをはじめとする強い酒類の販売を禁じる措置を発表した。
特別州西部で隣接するバンテン州タンゲラン市では今年11月、ビールも含む酒類の販売・流通禁止を決めた市条例を制定・施行しており、今回の禁止措置はこれに次ぐもの。
産業貿易局が、今回の措置実施の根拠として挙げたのが、酒類の監視、規制を決めた大統領令(1997年)と、同令に基づき酒類の製造、輸入、販売を具体的に取り締まる産業貿易省令(同)の両令。
当然、約8年も前の両令を、なぜ今になって同特別州が突然実施に踏み切ったのかをいぶかる声が出ている。
こうした声の中には禁止措置を宗教と関係づける見方もあるが、産業貿易局のチャトゥール・ラスワント広報担当はこの疑問には直接答えず、「これまで両令施行に向けた準備を進め、ようやく完全施行に目途がついたからだ」とだけ説明、続けて「違反した店・会社には営業免許の取り消しなど厳罰で臨む」と強く警告した。
一方、へーローやマタハリなど地元系の大手スーパー、そしてカルフールやランチ・マーケットなど外資系スーパーなどでは今回の禁止措置に合わせて、ウイスキーやワイン、ブランデーなどが酒類販売コーナーの棚から一斉に姿を消した。その代わりにアルコール度数が低く販売可能なビールが、つまみのポテトチップスなどと肩を並べて置かれている。
驚きと戸惑いを隠せないスーパーマーケット関係者たちだが、外資系スーパーの責任者は同措置を尊重するとした上で、「ラマダン(断食月)中には酒類の販売に神経を使っていた。年末を控えて売り上げが伸びると期待していた矢先の販売禁止は打撃だ」と表情を曇らせる。
今回の措置は、飲酒そのものに極めて厳しい中東のイスラム諸国、あるいは禁酒法(1920〜33年)時代の米国の状況とは違っていると、「左党」はひと安心するものの、では今後、ウイスキーやワインなどをどう入手するかでは、大いに頭を悩ませそうだ。
その一方で、「汚職大国」とのありがたくないレッテルを張られているインドネシアだけに、特別州政府職員や取り締まり当局関係者らが販売禁止を悪用、金目当ての不正行為に走るのではとの懸念が早くも出始めている。
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