2005年12月21日18時07分掲載
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イラク帰還兵を女子大生殺害容疑で逮捕、犯行2000年2月、動機は不明
2000年2月、米カリフォルニア州パームデールで起きた18歳の女子大生が4発の銃弾を受けて殺害された。捜査線上に浮かんだのは、イラク戦争に従軍していたカリフォルニア州兵の軍曹。警察は、当初捜査官をイラクに派遣して逮捕も検討したが、結局この軍曹が米国に戻るのを待った。軍曹は先月イラクから帰還。警察は引き続き内偵捜査を続けた上で、今月13日、軍曹が自宅から車で出かけたところを殺人の疑いで逮捕した。しかし、物証に乏しく、動機も不明な事件だけに、検察が立証に苦しむ可能性もある。(ベリタ通信=江口惇)
軍曹はレイモンド・リー・ジェニングス(31)。殺されたのは、アンテロープバレー・カレッジに通っていたミッシェル・オキーファさんで、00年2月22日夜パームデールで、自分の車を置いていた駐車場から、車を発進させた直後に何者かに銃撃された。警察が発見したときは、車のエンジンはかかったままで、運転席のドアも開いたままだった。
各種報道を総合すると、ジェニングスは当時、警備会社からパームデールの駐車場のガードマンとして勤務しており、事件の“目撃者”として、捜査に協力した。彼の当時の証言によると、銃弾の音を聞き、ミッシェルさんの車が少しバックするのを目撃した。しかし、犯人は、駐車中のバンに邪魔され、見えなかったという。
またミッシェルさんを発見したとき、まだ息があったが、犯行現場の証拠を荒らすのを恐れて蘇生術は施さなかったとも証言した。
当日、ミッシェルさんは友人と共に、ロサンゼルスで行なわれた音楽ビデオ収録のエキストラとして出演。その後、友人の車でパームデールの駐車場まで送った。友人は、ミッシェルさんが駐車場で彼女の車に乗り込むのを確認している。警察の調べでは、現場には強盗や、性的いたずらの形跡はなかったという。
▽容疑者は否認
捜査線上には、ジェニングスを含み約10人の容疑者が浮かんだが、いずれも決め手を欠き、捜査は難航した。ジェニングスは終始犯行を否認した。
捜査の遅れに苛立ったミッシェルさんの両親は、自ら探偵を雇い、情報収集に乗り出す一方、大きな広告掲示板を使って犯人逮捕に協力を呼び掛けた。掲示板には彼女の写真とともに「私は18歳で死ぬ用意はしていなかった。私を殺した者の逮捕に協力してください」との言葉が添えられた。
両親は00年末には、ジェニングスらを相手に民事賠償訴訟を起こし、これが容疑者逮捕への突破口を与える結果になった。
この訴訟で被告となったジェニングスは、弁明用として事件当夜の様子を詳細に述べたビデオを提出した。しかし、このビデオの内容を克明にチェックした弁護士が、彼の目撃証言が、めまぐるしく変化していることを突き止めた。弁護士は、これを警察に通報、容疑者逮捕につながる一因になった。
裁判所は、ジェニングスに対し保釈金を100万ドル(約1億1600万円)と決定した。これに対し、彼の弁護士は、ジェンニングスが、州兵勤務やイラクでの10カ月に及ぶ従軍を行なってきた“功績”を強調。裁判の審理が始るまで、保釈金の支払いなしで釈放できないか、と要請する一幕もあった。
ミッシェルさんの両親は、容疑者逮捕について、5年間の重荷が取れたと安堵しているという。しかし、凶器の銃も見つかっておらず、また犯行の動機も依然なぞに包まれている。
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