2005年12月27日08時02分掲載  無料記事
http://www.nikkanberita.com/print.cgi?id=200512270802112

11歳の子どもに銃弾浴びせ殺害 リオの冷血警官隊の恐怖

  南米ブラジルの都市リオデジャネイロで、武装警官隊による“即決処刑”が近年急増しているという。ブラジルは世界有数の犯罪都市で、殺人事件も多発しているが、警官隊は、麻薬ギャングや非行少年グループなどが住むスラム街などを急襲した際、まるで「殺しの許可証」を持っているかのように、銃弾を浴びせ殺害するケースも起きている。人権保護関係者らは、ブラジルの政治家たちには、銃弾によって現場処刑を行なう警察の悪しき“伝統”を立て直そうとする意志も勇気もないと批判している。(ベリタ通信=江口惇) 
 
 リオ郊外のスラム街で今月初め、武装警官隊がスラム街を急襲、バーの中にいた5人を射殺した。4人が16歳で、うち1人は11歳だった。至近距離から撃たれていた。 
 
 ブラジルは貧富の差が激しく、10歳程度でも銃を持って市内を徘徊する少年たちがいる。それだけに警官も神経をピリピリさせているのは事実だが、今回殺害された11歳の少年は、たまたま炭酸ソーダを買いにバーに立ち寄っただけで、麻薬ギャング組織とは無関係だったという。 
 
▽地元メディアは冷淡な反応 
 
 米紙ロサンゼルス・タイムズによると、少年の母親フェルナンダ・デ・オリベイラさんは「息子は頭、腹に5発撃たれていた。内臓も激しく損傷していた。あまりに残忍な方法で殺された」と批判する。 
 
 この事件では12人の警官が拘束されたが、腐敗の目立つブラジルでは、公正かつ迅速な裁判はあまり期待できず、警官たちが処罰を受けるのかさえはっきりしない。 
 
 この事件に対する市民の関心も低い。むしろ市民の間では麻薬ギャング団を警察が残忍な手口で取り締まることを容認する空気が支配的だ。市内浄化に役立つとむしろ支持する声もあるという。マスコミも、こうした市民感情を反映して、スラム街で少年たちが射殺されても大きな記事としては扱わない。 
 
 非営利組織グローバル・ジャスティスによると、リオデジャネイロ州では2003年に警官によって1200人が殺害された。多くが貧困の混血や黒人の男性。3日に1人が殺された計算だ。04年も983人が殺害された。このほか、警官による即決処刑は、過去5年間で2倍に増えているとの報告もある。 
 
 リオでは12年前に、32人の警官がスラム街で無辜の市民21人を殺害したのが、最大の虐殺事件だったが、ことし3月に、リオで非番の警官2人がバーを襲って銃を乱射、中にいた客ら29人全員を殺害する事件が起きている。 
 
 3月の事件では、犯行の動機は、警察内で進んでいた不正に関する内部調査に苛立った故の犯行ともいわれている。 
 
 
 
 警察では、これまでに警察によって射殺されたのは、すべて犯罪者であると警察の行為を正当化する一方、警察官による現場処刑を看過しないとの姿勢を明らかにしている。 
 
 しかし、英BBC放送によると、ある人権保護関係者は警官によって殺害された遺体の6割が、6発以上の銃弾を頭や背中に受けていることを明らかにしている。 
 
 頭や背中に何発も銃弾を浴びせるのは一種の処刑のスタイル。同関係者は、これは警察官の間で、依然現場処刑が継続していることを物語ると指摘。こうした警察権力の乱用を阻止するための措置を講じようとしないブラジルの政治家を批判している。 


Copyright (C) Berita unless otherwise noted.
  • 日刊ベリタに掲載された記事を転載される場合は、有料・無料を問わず、編集部にご連絡ください。ただし、見出しとリード文につきましてはその限りでありません。
  • 印刷媒体向けの記事配信も行っておりますので、記事を利用したい場合は事務局までご連絡下さい。