2005年12月29日15時03分掲載  無料記事
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億万長者の米MIT元教授を待ち伏せ銃撃 奇跡的に助かる

  米マサチューセッツ州ケンブリッジで今月16日夜、名門マサチューセッツ工科大学(MIT)の元教授ジョン・ドノバン氏(63)が、自分が代表を務める会社の駐車場で何者かに銃撃された。同氏は、コンピューターなどの電子工学が専門で、退職後起業家として成功、資産1億ドル(約116億円)を持つ億万長者でもある。しかし、企業運営などをめぐり敵が多いといわれ、また自分の娘から性的虐待で訴えられるなど家族内のもめごとなどを抱えていたといわれる。けがの程度は不明だが、同氏は翌17日病院を退院した。警察が犯人の行方を追っている。(ベリタ通信=苅田保) 
 
 ドノバン氏には、システム・プログラムに関し多くの著作があり、ベストセラーにもなっている。30年間MITに勤務した後、幾つかの会社を起業し、特に一流会社のトップを訓練するコンサルト会社は、成功を収めた。27200平方メートルの広大な敷地の住宅兼農場を所有している。 
 
 米紙ボストン・グローブなどにいると、事件が起きたのは16日の午後8時半ごろ。会社のある駐車場で出てきたところを待ち伏せを受け、銃撃を受けた可能性が高い。銃撃後、携帯電話で自ら警察に通報、マサチューセッツ総合病院に運ばれた。現場はMITの学生寮に近い場所。駐車場に監視カメラはついていなかった。 
 
 警察は、ドノバン氏が銃で撃たれた割には、重傷を負っていないため、防弾チョッキを着ていたのだろうかと、一時いぶかった。その後、銃弾の一発が、ドノバン氏のベルトのバックルに食い込んでいたのがわかった。バックルのお蔭で一命を取りとめた形だ。 
 
 ドノバン氏は起業家として成功をおさめるにつれ、事業のパートナーとの関係が悪化し、喧嘩別れになることもあったようだ。このためビジネスをめぐって恨みを持つ者を増やす結果になったという。 
 
 2002年には、家庭内のもめごとも表面化。彼の娘が、父親のドノバン氏に子どものころ性的虐待を受けたと訴えたからだ。彼には5人の子どもがあるが、この訴えで、父親と子どもたちの間に決定的に亀裂が生じた。 
 
 ドノバン氏は、性的虐待については「まったくの偽り」と反論、子どもたちは自分を自宅から追い出そうとしていると非難している。 
 
 このころからドノバン氏の周辺で不可解なことが起きる。03年には自宅にライフル銃で銃弾が撃ちこまれた。銃弾は、ドノバン氏がいつも座る椅子に命中していた。この事件の犯人は見つかっていない。 
 
 この事件の後、ドノバン氏は、警備会社に身辺警護で相談するなど、身に危険が迫っていることを意識した行動を取っている。 
 
 このほか、同氏は03年に、長男が自分の事業と名声を台無しようと脅迫していると警察に届けている。その後も末の息子が、コンサルト会社の建物に無断で入ったと同じく警察に届け出を出している。しかしいずれの申し立ても、その後取り下げられている。 
 
 警察では、ビジネス関係者や家族、友人らから事情を聞く方針だ。今のところ、ドノバン氏が犯人について心当たりがあるのか、あるいは顔見知りなのかどうかもわかっていない。 


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