2006年01月15日14時40分掲載  無料記事
http://www.nikkanberita.com/print.cgi?id=200601151440100

「怒りの抑制」が必要な時代に 米国人の5人に1人が深刻な状態

  怒りを爆発させてあとで後悔することはよくある話だ。しかし、怒りが、現代社会では大きな問題の一つになってると聞くと、そう安閑としてはいられなくなる。怒りは、放置すると、広範な暴力に転化するといわれる。米国では数年前、人気俳優のアダム・サンドラーが主演した「アンガー・マネジメント」が上映された。怒りを抑制できない若者の“怒り治療”をコメディー・タッチで描いた作品だが、心理学者ら専門家は、現実の世界でも怒れる人々が増えていると指摘している。(ベリタ通信=エレナ吉村) 
 
 街頭での口げんか、学校内でしばしば起きる銃発射事件、職場での暴力、それに家庭内暴力など、社会全体に怒りが充満している。心理学者によると、怒りは、家庭や、職場などに“伝染”していく性質を持つという。 
 
 米デトロイト・ニュースによると、ヘアー・スタイリストのロニャ・ホワイトさん(25)は、時として怒りを抑制できない。 
 
 レストランに行っても、サービスが良くないと思うと、突然店から出てしまうことも。ブティックの店員が、店に入ったときに、挨拶をよこさないと、ぷりぷりして店からUターンしてしまう。 
 
 こうした怒りや不満が募ると、次のどこかの店で、ささいなことから叫んだり、ののしりの声を浴びせたりする結果に。「怒りを十分に抑制できない。怒りを爆発させるが、醜悪だと思う」と、反省するホワイトさん。 
 
 事実、怒りを抑制できない米国人は意外と多い。「アンガー・ダイエット」の著者で心理学者のブレンダ・ショシャナさんは「怒りは、米国人の5人に1人の割合で、深刻な問題になっている」と話す。 
 
 ショシャナさんによると、精神安定剤の利用や、アルコール・麻薬中毒患者の多さ、肥満などは、遡ると原因が怒りにたどり着くとという。怒りには様々な形があるとされる。 
 
 本の中では、怒りをできるだけ小さくするための「30日ステップ計画」を紹介。ショシャナさんは、「怒りを抑えることができれば、より幸せな、より健康的な、そしてより創造的かつ若々しい生活が送れる」と話している。 
 
 「アンガー・マネジメント/平穏な生活のための6つのステップ(仮訳)」の著者、ピーター・ファバロさんは、店の会計係の女性が、自分にだけ無作法だと思って腹を立てるようなことは慎むべきだ、と指摘する。 
 
 「彼女は誰にでも無作法だからだ」とファバロさん。また相手が無作法だからといって、個人的にやり合っても意味がないという。大人になるまでに母親から作法を習っていない者に、説教しても時間の無駄になるからだ。 
 
 ファバロさんたち専門家は、怒りを放置すると、いつの日にか爆発し、究極的にはさらに怒りや暴力を増殖させていくことになると警告する。怒りのもつ破滅的な行動を抑制するためにも、怒りの内容を知り、管理することが重要だと、述べている。 
 
 公立図書館で黒人の生徒を引率していた31歳の男性は、職員から、生徒がうるさいと退去を要請された。これに反論すると、職員は警察を呼んで、逮捕すると話したという。明らかに差別と感じたが、怒りを抑えて図書館から退去した。 
 
 この男性は、後日、図書館に電話をかけ謝罪を要求したという。ファバロさんは、この男性の行動は、正しいものだったと話している。 


Copyright (C) Berita unless otherwise noted.
  • 日刊ベリタに掲載された記事を転載される場合は、有料・無料を問わず、編集部にご連絡ください。ただし、見出しとリード文につきましてはその限りでありません。
  • 印刷媒体向けの記事配信も行っておりますので、記事を利用したい場合は事務局までご連絡下さい。