2006年01月18日19時42分掲載
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市の警官が移民取り締まりを兼務 中南米系住民は差別と反発
米商業会議所のトーマス・ドナヒュー会頭が最近、「米国は歴史的に移民の国だ」と発言、米国内で広がっている反移民感情をけん制した。しかし、メキシコ人ら不法移民への感情が収まる兆しはない。米カリフォルニア州オレンジ郡にあるコスタメサ市では、市の警官や刑事らが、従来の職務の範囲を超えて、不法移民を取り締まる仕事を兼務する方針を打ち出し、中南米住民から反発の声が上がっている。(ベリタ通信=エレナ吉村)
今月3日に行なわれたコスタメサ市議会の聴聞会で、警官らが移民取り締まりも兼務する市の方針について、反対派の一人、ベニト・アコスタ氏(25)が陳述人として市に対し方針の撤回を要求。しかし、同氏が持ち時間を過ぎても、陳述を中止しないため、議会内に警官が入り、同氏を強制的に連れ出す騒ぎになった。
この一部始終は、テレビで報道され、数人の警官に囲まれ、引きずられながら連行されるアコスタ氏の姿が放映された。
コスタメサ市の方針が打ち出されたのは昨年12月。実施されれば、従来連邦政府が行なっていた移民の取り締まりに、警官や刑事が加わることになる。全米の地方自治体の中では、コスタメサ市が第一号ともなる。
市では、40人の警官らに移民問題に関する教育を行い、市内で悪質な犯罪で逮捕・拘束された者に対して、不法移民かどうかを尋問する権限を持たせる。仮に不法滞在とわかれば、移民局に引き渡すことになる。
▽民間団体による国境監視も
市警察では、重罪犯として逮捕されたギャングなどに、米国滞在の資格を問い質すものであり、移民局に協力することは、市民にとっても利益があることだと強調している。
反対派は、中南米系住民が街角で警官に身分証明書の提示を求められ、証明書がない場合、不法滞在者として送還される恐れがあると反発。アコスタ氏は「(決定は)人種差別であり、人権違反でもある。これは市民を分断させるものだ」と指摘している。
同氏は12月の市の決定の際にも、同案推進派のアラン・マンソー市長を「人種差別の豚」と批判している。
3日以降も市議会周辺では、推進派と反対派が、デモ隊を組織、それぞれの主張をぶつけ合った。反移民団体「ミニットマン」の創設者ジム・ギルクリスト氏も駆けつけ、市の姿勢を賞賛した。「ミニットマン」はアリゾナ州などの米南部国境地帯で、民間人による国境監視の運動を続けている。
一方、米商業会議所のドナヒュー会頭は、米国内で高まる移民締め出しの流れをけん制、総合的な移民政策の必要性を強調している。
同会頭は、米国では今後7700万人のベビーブーマー(1946−64年生まれ)が定年を迎え、必然的に労働力が不足すると強調。この穴埋めのために、メキシコなどからの労働者が必要になると述べた。
また農園やレストラン、ホテルのなどのサービス産業で、米国の経営者が、不法労働者を安い賃金で働かせているとの批判があることについて、「安い労働者を使っているとの主張は、まやかしだ」と反論。国内にいる1100万人といわれる不法滞在者が、一斉に米国から引き揚げたら、米経済は成り立たなくなると指摘した。
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