2006年01月20日00時43分掲載
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最高裁判決で「ヤミ金融」化した消費者金融 テレビCMの即刻中止を
今月13日、最高裁はローンの分割返済をめぐる訴訟の判決で利息制限法(最高金利年15―20%)を超える金利分について、借り手の支払い義務を否定する初の判断を下した。これまで、武富士、アイフルなど消費者金融各社は、利息制限法とは別に出資法(最高年利29・2%)で定められた金利で消費者に金を貸してきたが、これを事実上、違法とした判断だ。しかし、判決後も、消費者金融各社は「違法金利」を堂々と画面に表示したテレビCMを流し続けている。民放各社は即刻、CMを中止すべきだ。(東京=稲元洋)
もともと、消費者金融のような個人を対象とした金融業は、利息制限法に従うべきだと多重債務者救済の弁護士グループなどは主張してきた。最高裁判断はこの主張を認めた内容だ。
最高裁判断が示されたことで、20%を超える金利で営業する大手消費者金融は、違法な金融業という点では「トイチ(10日で10%の利子)」で金を貸す「ヤミ金融」などと同格になったとさえいえる。
金融庁も五味広文長官が16日の会見で、消費者ローンに対する規則を改正する方針を明らかにしている。
最高裁判決の背景には、テレビCMなどを通じて消費者金融が社会に深く浸透、結果として安易な借り入れを重ね、多重債務者となった揚げ句に自己破産、さらには借金苦での自殺などが急増している問題があり、高金利で収益を上げている消費者金融各社に警鐘を鳴らす意味があったとみられる。
▽金利引き下げの動き見せず
判決は消費者金融業界に大きな衝撃を与えているもようだが、まだ、各社とも金利引き下げの動きは見せず、違法金利のまま営業を続けている。
民放各社でのテレビCMの中でも「10%―29・2%」などと違法金利を堂々と表示している。これは違法行為を公共の電波で宣伝していることに等しい。
民放各社にとって、消費者金融は今や最大のスポンサーグループになりつつあり、消費者金融各社からの広告収入総額は全国の放送局の総額で年300億円以上となっている。
CMを通じてテレビが視聴者に消費者金融に対する「誤ったイメージを与えている」との批判は強い。
NHKと民放で作る「放送と青少年に関する委員会」は2002年、民放各局への提言文の中で「近年の消費者金融CM放送の増加は、青少年に安易に借金をする風潮を助長している」と指摘、少なくとも午後5時から午後9時の時間帯は消費者金融CMの放送を自粛するよう申し入れた。
その後、民放各社は、借り入れを進める内容のCMを自粛し、消費者金融のCMは「事前にしっかり確認」など返済計画を考えるよう呼び掛ける内容などに変わった。
しかし、実質的に消費者金融の存在を宣伝していることに変わりなく「声色を変えただけで、借金奨励CMであることに変わりはない」との批判も根強い。そして、今回の最高裁判によって、消費者金融CMには新たに「違法性」という問題が加わった。
この問題をめぐっては、民放各社だけでなく、消費者金融広告を掲載しない一部の全国紙をのぞき、新聞、雑誌など多くのメディアも同罪だ。
最高裁判決を受け、消費者金融大手のアイフル被害対策全国会議代表の河野聡弁護士は、消費者金融利用者らに情報を提供する「アイフル・シティズ過払い金110番」を開設、消費者が「過払い金」の返還を請求できることなどを訴えていく方針を明らかにしている。
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