2006年01月22日15時31分掲載
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キューバ人が“着地”失敗で強制送還 米政府の判断に批判の声
共産主義政権のキューバを嫌って故国を脱出した15人のキューバ人が今月、約160キロの海を越えて、米南東部フロリダにたどり着いた。米国は海からのキューバ人入国者に対しては、米国の領土に実際に“着地”すれば、入国を認めるとのユニークな政策をとっている。こうしたキューバ人は、カストロ国家評議会議長のイデオロギーに反旗を翻した者であり、その労に報いるとの人道上の配慮からだ。ところが、今回は、15人が、あと少しのところで米国に“着地”していなかったとの理由で、強制送還された。これに対し、在米キューバ人から「非人道的」との反発の声が上がっている。(ベリタ通信=江口惇)
米政府は、キューバから海を越えて不法入国する者に対しては、“ウエット・フット(ぬれた足)・ドライ・フット(乾いた足)”という政策を取り、メキシコなどからの不法入国者とは異なる厚遇をしている。
この政策は、キューバから漂着した脱出民が、米国の土地などに実際に“着地”した場合(乾いた足)は、滞在許可を出す。しかし、米国にたどり着く前に、米沿岸警備隊によって海で拘束された場合(ぬれた足)は、強制送還されるというもの。
米政府は、“ウエット・フット・ドライ・フット”政策に関しては、陸地のほか、橋、岩、埠頭を“着地”場所と判断している。
各種報道を総合すると、15人はことし1月2日、自家製のボートで、キューバを出国した。3日後の5日に、メキシコ湾に突き出たフロリダキーズの橋桁の近くで、沿岸警備隊に発見され、収容された。脱出民には、2歳と13歳の男の子どもが含まれていた。
フロリダ本島南部には多数の小島が弧状に点在している。これら小島は長大なハイウェー橋によって結ばれている。現在、未使用の古い橋と、新しい橋が平行して走っている。15人は古い橋桁付近で収容された。
米国土安全保障省が、15人に滞在許可を出すかどうかの検討をした。その結果、15人は古い橋の一部にたどり着いたが、この橋は途中で壊れており、米国への“着地”にならないと判断された。
つまり橋桁が壊れていることは、米国の陸地につながっていないことを意味する。陸地につながっていない以上、15人は米国の土地に足を踏み入れたことにならないと判断されたわけだ。
15人は、他の入国者らとともに9日に、米沿岸警備隊によってキューバに強制送還された。
15人が拘束された古い橋桁の先には、新しい橋があった。米政府当局者は、15人が新しい橋にたどり着いていれば、滞在が許可される可能性があったことを示唆している。
今回の強制送還に対し、60万人と推定される在米キューバ人は、自由を求めて危険を顧みず米国に来た15人を、キューバになぜ戻したのかと反発している。マイアミなどでも抗議行動が起きている。15人の弁護士は「壊れた橋は、岩や埠頭とみなされるべきだ」と反発している。
米国とキューバの関係は冷却化している。ブッシュ大統領とカストロ議長は犬猿の仲といわれる。15人の強制送還とは直接的には関係のない話だが、ブッシュ大統領は、ことし3月に米国で開催される「ワールド・ベースボール・クラシック」(WBC)の出場を要請したキューバ代表団に対し、入国を認めない決定を下している。
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