2006年01月23日15時15分掲載
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米大物キャスターがアルジャジーラの誘い断る ディスカバリー・チャンネルと契約
2005年に米ABC放送の長寿番組「ナイトライン」のアンカー役を辞任したテッド・コッペル氏(65)が、中東カタールの衛星テレビ局アルジャジーラからリクルートされたが、断ったという。同氏は、米国のテレビの中では、硬派ジャーナリズムを代表する大物アンカーとして知られた人物。しかし、ABCを去った後も、報道ジャーナリズムに対する熱意は消えず、米国の教育ドキュメンタリー作品を放送するケーブル・ネットの「ディスカバリー・チャンネル」と契約。引き続き硬派ジャーナリズムの本道を進む決意だ。(ベリタ通信=有馬洋行)
コッペル氏は英国ランカシア州生まれ。両親はユダヤ人。ニューヨーク州のシラキュース大学を卒業後、カリフォルニア州のスタンフォード大学でジャーナリズムの修士号を取った。1963年にABCに入社、外国特派員を経験した後、80年から深夜の報道番組「ナイトライン」のアンカー役を務めた。
05年11月22日の番組を最後に、25年間務めたアンカー役を降板、自らのスタッフとともにABCを去った。
コッペル氏はABCを去った後、アルジャジーラの幹部を昼食を取る機会があり、その際契約の誘いを受けたようだ。しかし、同氏は今月13日、アルジャジーラの誘いを断っていたことを明らかにした。
▽アルジャジーラの姿勢は弁護
米紙マイアミ・ヘラルド(電子版)によると、アルジャジーラはこれまでアラビア語の放送を行なってきたが、今年中に24時間の英語放送をスタートさせる予定。このため、これまでに英国の大物キャスターのデイビッド・フロスト氏や、「ナイトライン」の元リポーターのデーブ・モラッシュ氏らと契約している。
コッペル氏への誘いも、この一環とみられる。同氏は、アルジャジーラが申し出た条件は「魅力的だった」と話しているが、詳細は明らかにしていない。
アルジャジーラはこれまで、国際テロ組織アルカイダの声明やビデオをタイムリーに流すなど、アラブ世界で、急速に支持を集めてきたメディア。それだけにブッシュ政権は反米宣伝を煽る放送局として警戒している。西側ジャーナリストがそうした放送局に参加することには、米国内に批判の声もある。
コッペル氏は、アルジャジーラの幹部と会うこと自体が、アルジャジーラの宣伝に使われていることになるとの批判に対し、「アルジャジーラが、アルカイダの宣伝放送局との見方が一般的だが、アルジャジーラは、過去のアラブ世界のジャーナリズムとは大きく異なる」と指摘。アルジャジーラの存在は、むしろ果敢な実験とみるべきだと弁護した。
コッペル氏は、「ディスカバリー・チャンネル」とは3年契約を結んだ。番組の内容が、報道の仕方によっては批判を受ける可能性もあるため、ディスカバリー側に確認したところ、「内容が事実に即し正確である限り、支援する」との答えがあったため、契約に踏み切ったという。
米国のテレビ界は、視聴率優先の営利主義によって、硬派の調査報道などが経費増を理由に敬遠されがちになっている。コッペル氏は、視聴率重視の番組作りが先行し、外交、社会問題など扱う一時間枠のドキュメンタリー番組などが姿を消していると指摘している。
一方、大物アンカーが、報道番組を通じて世論形成に影響を与えるという図式も、コッペル氏のほか、ダン・ラザー、トム・ブロクロウ、ピーター・ジェニングス(故人)らの重鎮が05年中に相次いで一線から退いたことで、大きな転換点を迎えている。
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