2006年01月25日18時11分掲載
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移民閉め出しに反発、米国境警備隊暗殺を計画 メキシコ組織「コヨーテ」がギャング団使い
メキシコから組織的に移民を不法に送り込んでいる通称「コヨーテ」とよばれる一群が、米国国境に配備されている国境パトロール隊を殺害するため、ギャング団を雇う計画という。この事実は、米国土安全保障省が、国境パトロール隊宛てに送った昨年12月21日付の極秘メモから判明したとされる。米国内でメキシコ国境の監視が強化され、不法移民送り出しに支障が出ていることに「コヨーテ」が激怒したためという。(ベリタ通信=苅田保)
各種報道を総合すると、メモの内容は「身元不詳のメキシコ人の不法移民送り出し業者らが、米・メキシコ国境の警備強化に怒り、米国の国境パトロール隊に対処する最良の方法として、殺し屋組織を雇うことで合意した」というもの。
この組織は、米カリフォルニア州ロサンゼルスで約20年前に結成されたギャング団「マラ・サルバトルーチャ」(通称MS13)で、中米のエルサルバドル、メキシコ、グアテマラ、ホンジュラスからの不法移民を中心に構成されている。
メキシコ系米国人のギャング団などと対立抗争を起こしながら、急速に成長。殺人、麻薬密輸、脅迫、レイプなどの凶悪犯罪に手を染めている。ロサンゼルスや、バージニア州北部など全米34州に組織を持っている。上記の中米4カ国にも組織を持っているという。
米連邦捜査局(FBI)は2004年にMS13の台頭を警戒し、同組織だけを対象にした特別班を結成している。05年には全米で一斉摘発が行なわれ、組織に関与した650人が逮捕されている。
FBIの推定では、構成員数は1万人といわれるが、民間のシンクタンクの推定では、3万人ともいわれる。
MS13は、04年にホンジュラスでバスが襲撃され、子どもを含む乗客ら28人が死亡した事件にも関与したとされている。
▽実際に隊員死亡事件も
極秘メモは一部の新聞が報じたが、米当局者はメモの内容についてコメントを避けている。
このメモが送付された後、国境パトロール隊では緊張が走ったという。近年、米国内での国境警備が強化されたことに比例して、米国パトロール隊への投石や、発砲事件が起きていたからだ。
ある隊員は、防弾着ではライフル銃の銃弾を防げないと指摘し、格好の標的になるのでは、と不安を訴えている。
テキサス州で最近、メキシコ領内から2件の発砲事件があった。またカリフォルニア州南部の国境では昨年12月30日、18歳のメキシコ人が米国内に不法入国した。その直後、パトロール隊員に発見され、投石しようとしたため、パトロール隊員に銃で撃たれ死亡する事件が起きている。
移民取り締まり強化を主張するトム・タンクレド下院議員(共和党、コロラド州選出)は、MS13は「血に飢えた」集団だとする一方、国際テロ組織アルカイダと会ったとの情報もあると指摘している。
ブッシュ大統領は、メキシコ移民の完全締め出しには難色を示し、タンクレド氏ら強硬派とは一線を画しているが、不法移民対策に協力しないメキシコ政府に対し、強硬派から「メキシコはもはや米国のよき隣人ではない」と、不満の声が上がっている。
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