2006年02月03日03時04分掲載  無料記事
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野党党首を名誉棄損で告訴の構え 収賄疑惑受けた東ティモール首相

  【クアラルンプール3日=和田等】東ティモールとオーストラリア間のティモール海にある有望な石油・ガス埋蔵地グレーター・サンライズ鉱区の開発をめぐり、両国政府は1月初旬、同鉱区から得られる税収やロイヤルティー(鉱区使用権料)収入などを両国で折半することなどで正式に合意した。 
 
 同合意に関して東ティモールの野党第1党・民主党のフェルナンド・ラサマ(デアラウジョ)党首はこのほど、マリ・アルカティリ首相はオーストラリアから賄賂を受け取り交渉で妥協したと批判、東ティモール国民の主権をないがしろにした首相は辞任すべきだと主張した。 
 
 地元各紙によれば、これに対してアルカティリ首相は「私が賄賂をもらったという証拠を出すべき。証拠もなく、うわさや憶測だけを頼りに賄賂を受け取ったとの主張を行なうことは名誉棄損にあたる」と反論、ラサマ党首を相手取って名誉棄損訴訟を起こす構えを示している。 
 
 ラサマ党首も「証拠を出せというのなら法廷で出す用意がある」と受けて立つ構えで、対決姿勢を一段と強めている。 
 
 アルカティリ首相が賄賂を受け取ったとの疑惑は今回が初めてではない。米国で登記しているポルトガルの石油・ガス開発会社オセアニック・エクスプロレーション社が2004年に、ティモール海の別の石油・ガス埋蔵地バユ・ウンダン鉱区の開発を目指す米国企業コノコフィリップスが開発権を取得するため、アルカティリ首相に賄賂を贈ったと暴露、その上で、米国のコロンビア地裁に審理を求める提訴を行なった。 
 
 この際に首相は、訴訟手続きが行なわれたのが米国であったこと、首相自身が訴訟の対象になっていなかったことなどから、対抗措置はとらなかった。 
 
 今回、首相がラサマ党首を相手取って名誉棄損訴訟を起こす構えを示した背景には、名誉棄損に刑事罰を科す規定が盛り込まれた刑法案が成立間近という事情がある。刑法案はすでに国会を通過し、大統領の署名を待って発効する段階にまで来ている。 
 
 しかし、名誉棄損に刑事罰を科すとの規定に関しては、「言論の自由を抑圧し、民主主義に逆行する規定である」などとの批判が国内外の人権団体やジャーナリスト組織、国連の法律専門家、ライス米国務長官をはじめとする政治家たちから相次いで出ている。 
 
 こうした批判に対してアルカティリ首相は、「言いたい放題の言論が横行することを防ぎ、報道機関をはじめとした言論に説明責任を求める意味でも名誉棄損に対する罰則を盛り込んだ規定は必要」と主張、刑法の規定修正に応じる考えはないとの姿勢を貫いている。 
 
 刑法が修正なしで発効し、首相が民主党のラサマ党首を相手取る名誉棄損訴訟を起こせば、これが刑法に基づく訴訟第1号になることは間違いない。東ティモールでは今、「安易に政府の指導者を批判すると『痛い目』を見る、ということをはっきり示し、政府批判を封じ込める布石を打っておこうというのが首相の狙いだ」と憂慮する声が高まっている。 


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