2006年02月07日00時41分掲載
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「プレイボーイ」の発行規制は困難 頭悩ますインドネシア政府
世界最大数のイスラム教徒を持つインドネシアで、米男性雑誌「PLAYBOY(プレイボーイ)」のインドネシア版発刊問題をめぐり、イスラム系団体を中心に反対運動が起きている中、同国政府が発刊を規制する法的根拠を見つけられず、頭を悩ましている。手を打てない最大の理由が、1998年以降の民主化の下、国民が求めていた出版規制の撤廃=言論の自由化=にあるのは何とも皮肉。副大統領らは「事前の規制は不可能」と繰り返し、3月発刊予定の同誌の内容を見た上で対策を講じる考えだ。(ベリタ通信=都葉郁夫)
インドネシア版「プレイボーイ」を出版するのは、ジャカルタに拠点を置くベルベット・シルバー・メディア社。同社で広報・宣伝を担当するアビアント・ヌグロホ氏が今月初め、「同誌の発刊許可を既に取得し、3月中に発刊させる予定」と明らかにした。
イスラム教徒が人口の約90%を占め、女性のヌード写真などには極めて保守的なイスラム団体から反発が出るのは、ヌグロホ氏も十分に分かっており、想定通り、出版計画を地元インターネットサイトで発表した直後から、イスラム団体などから「出版反対」運動が早速起きた。
反対運動は今や女性団体も巻き込みながら、ジャカルタにとどまらず、第2の都市東ジャワ州のスラバヤや古都ジョクジャカルタなどにも拡大。デモに参加したイスラム教徒たちは「ポルノ雑誌の発禁を」などと書いたプラカードを掲げ、政府に出版差し止めを決定するよう求めている。
これに加え、ディスコやカラオケにも強い不快感を示しているイスラム過激派勢力は、政府が規制しないのなら、自分たちが実力を行使してでも同誌の発刊を阻止するとの高圧的姿勢をみせ始めている。
これに対し政府側は、イスラム教徒および同団体の反対運動に一定の理解を示しているものの、期待される措置を講じられないのが実情だ。
1966年から32年間続いたスハルト独裁政権下では、当局が厳しく管理していた「出版物認可制度」があり、反政府的は書籍、新聞、週刊誌だけでなく、際どい写真などを掲載した娯楽雑誌にはこの「伝家の宝刀」を抜けば、規制や発禁処分がたちどころに可能だった。
ところが、1998年5月、学生らによる民主化要求運動でスハルト大統領が辞任を余儀なくされたのを機に、同国では政治の民主化が一挙に進み、中でも象徴的存在のひとつとなったのが、言論弾圧の具として悪名の高かった「出版物認可制度」の完全撤廃だった。
この結果、インドネシアでは同年後半以降、新聞、雑誌などの出版物が雨後の筍(たけのこ)のように発行されている。今回の「プレイボーイ」インドネシア版も昨年11月に出版許可を得たという。
こうした経緯から今回の事態で最も頭を悩ませているのが、民主化を進めてきた当のインドネシア政府。訪日を終えて帰国したカラ副大統領も「プレイボーイ」対策を質問された際、「発刊には反対だが、現状で政府に規制権限は一切ない」と話し、お手上げ状態をさらけ出す始末。
そこで注目されているのが同国国会で進むポルノ規制法案審議の行方だが、成立をいくら急いだとしても3月の「プレイボーイ」の発刊には間に合わないという。
政府の限界を知ったイスラム団体は今後、インドネシア版「プレイボーイ」発刊への反対運動をさらに全国規模へ拡大、出版社に発刊を断念させるまで粘り強く闘う姿勢を明らかにしている。
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