2006年02月08日13時47分掲載
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米メディアは風刺漫画の掲載に慎重 イスラム教冒涜と判断
デンマークの新聞がイスラム教の預言者ムハンマド(マホメット)を風刺する政治漫画を掲載したことをきっかけに、イスラム教徒による抗議行動が世界中に広がっている。この問題は、デンマーク紙に連帯の意を表すため、フランス、ドイツなど欧州の新聞社が相次いで風刺漫画を掲載したことで、一気にイスラム教徒の怒りが爆発した形になった。これに対し、これまで、新聞の「表現の自由」を長年主張してきた米国メディアは、ニュース自体は大きく報道している。しかし、風刺漫画の掲載は控えるなど、欧州メディアとは対照的に慎重な姿勢をみせている。(ベリタ通信=江口惇)
米紙フィラデルフィア・エンクワイヤーは、「多くの米国メディアが、問題のムハンマドの漫画を掲載するか、あるいは(掲載して)イスラム教徒の感受性をいたづらに刺激すべきか、のジレンマに陥っている」と指摘している。
エディター&パブリッシャー(電子版)によると、ワシントン・ポスト紙は、同社の決めた基準に照らし、風刺漫画の掲載をしない方針を表明している。これまでも死体の悲惨な写真などの公表を控えており、今回も漫画を掲載しなくても、記事だけを使って、世界的な抗議行動を読者に説明ができると話している。
米国最大の発行部数を誇るUSAトゥデーも、今のところ風刺漫画の掲載を控えている。しかし、今回の騒動は、漫画自体が原因になっているため、漫画にニュース価値があることは認めている。
米国のメディアが漫画掲載に慎重なのは、漫画の内容がムハンマドを「冒涜する」可能性が大きいためだ。イスラム教では、預言者ムハンマドを冒涜するような行為は一切許されない。
漫画は、爆弾の形をしたターバンを巻いたムハンマドを登場させ、預言者をテロリストと結びつけるなど、イスラム教徒を強く刺激する内容になっている。
各メディアとも、欧州で問題となっている風刺漫画を掲載すべきかで、編集局内部で活発な議論が行なわれたようだ。米紙ロサンゼル・タイムズでも、議論の結果、漫画は一部の読者にとって、侮辱的な内容になっていると判断。視覚(漫画)に訴えなくても、記事によって読者に趣旨が伝えられるとして漫画掲載を見送った。
当然、数は少ないが、米国のメディアの中でも、風刺漫画を掲載した新聞社もある。一部のテレビ局も、記事を伝える中で、漫画を紹介することは必要として放映している。このほか、米国メディアのホームページから、欧州メディアのページへリンクできるようにもなっており、インターネット上では、風刺漫画を見ることはできる。
対イラク戦争などでアラブ諸国ではまったく人気のないブッシュ政権も、この問題では、欧州メディアの態度は「イスラム教を冒涜するものだ」と、イスラム教の抗議に理解を示す気配りをみせている。これにはイラク戦争の盟友英国も同じ対応をみせている。
これに対し、ロサンゼルス・タイムズ紙は、ムハンマド冒涜をめぐる問題は、新聞社とイスラム教徒間の摩擦であり、この問題に国家が入ってくることは「表現の自由」の観点から危険だとの認識を示している。
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