2006年02月14日17時59分掲載  無料記事
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NY地下鉄で事故に遭うのは男性が8割 ニューヨーク大が調査

  ニューヨーク市民の通勤の足である地下鉄。料金も安く、また地上の交通渋滞を避けるには、地下鉄を使うのが利口だ。NY地下鉄の利用客は、1日700万人で年間では24億人の人々を運んでいる。地下鉄は安全といわれるが、事故も当然起きている。ニューヨーク大学医学部はこのほど、地下鉄で事故に遭い、病院に運び込まれた負傷者が、1990年から2003年までの集計で208人に上ったことを明らかにしている。(ベリタ通信=有馬洋行) 
 
 ニューヨーク大は、NY地下鉄構内で起きた負傷者の治療に当たる「ベレブー・ホスピタル・センター」に搬入された患者数を下に、負傷の程度などを統計的に調査した。こうした負傷者に関する統計はこれまで取られておらず、今回が初めてという。 
 
 各種報道を総合すると、負傷者の性別は、男性が8割と女性を大きく引き離している。全体の平均年齢は38・8歳。負傷者の年齢層は、5歳から93歳までで、事故が誰にでも起きる可能性を示唆している。事故原因をみると、全負傷者中4人に1人が、自殺を試みた者という。 
 
 負傷者208人中大半の人は、電車事故特有の四肢の切断という悲劇を免れている。これに対し、指を切断された者や、腕や足を失った者は34人で、また四肢を失ったのは一人だけだった。入院後、死亡した者は20人に達している。 
 
 今回の調査は、負傷と事故の相関関係を探るのが狙い。ニューヨーク大では、2000から03年に絞って別に調査したところ、負傷者56人中25人が失業者だったという。 
 
 この結果から、ニューヨーク大では、社会の景気が悪くなり、失業者やホームレスが増えると事故も増えるパターンを指摘している。 
 
 ニューヨーク大で調査に携わったアンバー・グス博士は、事故を回避する手段としては、運転手が駅に進入する際に、スピードを落とすことを挙げている。電車がスローダウンすれば、線路に落ちている人をはねずに停車することも可能で、また速度が落ちていれば、負傷も軽くてすむと述べている。 
 
 また香港の最新の地下鉄にみられるように、乗客と電車の間に保護用の仕切りを設置することを提言している。しかし、NY地下鉄は創業から100年以上経っており、経費の面からも、大規模な改造は困難だろうと指摘している。 
 
 一方、「精神医学アーカイブ」のまとめによると、NY地下鉄利用客の4分の3が、電車が駅に入ってきたときに、後ろから押されてプラットフォームから線路に落ちるのでは、と不安に思っているという。 
 
 NYUなどの過去の調査では、1975年から91年にかけて、地下鉄の駅で、電車が進入してきた際、後ろから押されて線路に転落、死亡したり負傷した者は52人に達している。 
 
 米紙ロサンゼルス・タイムズによると、コロンビア大学で公衆衛生を研究しているロビン・ゲーションさんは「後ろから誰かに押されても何かにつかめるように、いつも階段のそばに立つことにしている」と、自衛手段を講じていることを打ち明けている。 


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