2006年02月17日20時45分掲載  無料記事
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保安官発砲のビデオが論議に、無防備の相手?に至近距離から3発発射

 米カリフォルニア州サンベルナルディノ郡のチノでことし1月末、郡保安官事務所の係官がスピード違反で追い詰めた相手を拘束する際、銃を発砲、重傷を負わせる事件が起きた。この一部始終を現場に近くの住人がビデオカメラに収めており、事件後全米のテレビで発砲の模様が放映された。ビデオを見る限り、係官が、命令に従って行動していた無防備の相手に至近距離から3発の銃弾を撃ち込んだ形になっている。撃たれた相手は幸い一命を取りとめたが、リバーサイド郡保安官事務所や郡検事局が、発砲に問題はなかったどうか調査に乗り出している。(ベリタ通信=苅田保) 
 
 各種報道を総合すると、1月29日夜、アイボリー・ウェッブ係官(45)は、猛スピードを走る車を追跡、車は道路フェンスにぶつかり、ようやく止まった。車には容疑者二人が乗っていた。この後、係官が二人を取り押さえている最中に発砲事件が起きた。 
 
 全米に放映されたビデオによると、銃を抱えた係官は、二人のうちの1人、エリオ・カリオンさん(21)に対し、「地面に伏せろ」と命令。カリオンさんが命令に従い、うつぶせになった様子をビデオは映し出している。その直後、係官は「起きろ」と命令、カリオンさんが、起き上がろうとした瞬間、至近距離から3回連続的に発砲した。 
 
▽被害者はイラクからの帰還兵 
 
 カリオンさんは、当時無防備でビデオからは抵抗した気配はない。弾は胸、肩、足に命中した。車を運転していたのは、問題の画面に映っていなかったもう1人の人物で、カリオンさんは同乗者にすぎなかった。カリオンさんは空軍の要員として、最近イラクから帰還したばかりだった。車を運転していたのは、カリオンさんの知人で、無免許運転だった。 
 
 ビデオ放映の反響は大きく、係官の発砲は過剰防衛ではないかとの声が上がった。米国では、警官が発砲事件を起こしても、証拠が不足し、責任を問われることはまれだ。しかし、今回は、“証拠”のビデオが、広く全米に公開されたため、事態を重視した郡検察局や保安官事務所も速やかに調査に乗り出している。米連邦捜査局(FBI)も、差別的な対応がなかったどうか調査している。 
 
 発砲したウェッブ係官は、休職扱いになった。同係官は、身長180センチで高校時代はフットボールなどで鳴らしたスポーツマン。アイオア大学在学中には、全米大学フットボールの王者を決めるローズ・ボウルにも出場したことがある。 
 
 父親は地方都市で黒人としては初めて警察のトップに登りつめた人物。父親が警察に入った1963年当時は、大半が白人だったという。ウェッブ係官も父親のような警官になりたいと漏らしていたという。 
 
 発砲が正当だったどうかの結論が出るのは数カ月かかる見通し。ある関係者は、ビデオは白黒で、画像も鮮明ではないため、一部のシーンだけを見て、係官に非があるような判断を下すのは危険だとしている。 
 
 しかし、入院中のカリオンさんの家族は、係官の発砲に怒りの声を上げている。父親のヘリオさんは「(係官は)バッジを外すべきだ。息子が生きていることが信じられない位だ。ほとんど心臓が撃ち抜かれるところだった」と話している。 


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