2006年03月19日18時19分掲載
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FEMAだましホテル料金を架空請求 悪質ホテル経営者を起訴
昨年8月末に米南部のルイジアナやミッシシピ州を襲った超大型ハリケーン「カトリーナ」では多数の住民が家を失った。避難民は連邦緊急事態管理局(FEMA)が提供した民間のホテルに一時的に避難し、その宿泊費用はFEMAが支払った。ところが、このFEMAの支援制度をホテル経営者が悪用し、23万2000ドル(約2700万円)をだまし取っていた。この経営者は最近、詐欺や虚偽の料金請求の罪で起訴されたが、ハリケーン被害の救済をめぐり、ホテル経営者がFEMAへの不正請求で罪に問われるのは、今回が初めて。(ベリタ通信=江口惇)
起訴されたのは、米テキサス州南東部のガルベストン市でホテル「フラッグシップ」(220室)を経営する中国系のダニエル・エ被告(52)。このホテルは、ガルベストン市が1963年に建設し、エ被告にリースしていた。
各種報道を総合すると、エ被告は、隣りの州のルイジアナなどがハリケーン被害を受け、多数の住民が家を失ったことを知り、FEMAの支援プログラムに参加した。このプログラムは、FEMAがホテルに宿泊する避難民の料金を保証するもの。
ところがエ被告はこの制度を悪用。ホテルの従業員や知人のほか、妻がやっているビジネスの従業員などの名前を使い、ホテルに宿泊したように装って、FEMAに対し、23万2000ドルを架空請求した。
その後、FEMAの監査で不正疑惑が浮上。昨年12月、連邦捜査官らが、テキサス州のエ被告の自宅を家宅捜索した。
この捜索の後同被告は23万2000ドル相当の二通の小切手を振り出し、自主的に連邦政府に返還する手続きをした。エ被告は捜査にも協力していたが、その甲斐もなくヒューストンの大陪審によって今月2日に起訴された。
エ被告の弁護士ロバート・ベネット氏によると、12月に8人の連邦捜査官が、エ被告の自宅を捜索した際、捜査官は銃を突き付け、弁護士の立会いのないまま自白を強要したという。
▽不正でなく過ちと主張
ベネット弁護士は「彼らは被告の自宅を捜索し、彼を一室に押し込んだ。その上で弁護士にも相談させず、自白書を書かせた」と批判している。捜査官はコンピューターのほか、会計上の書類などを押収したという。
またエ被告がこれまでに脳にできた腫瘍の手術を3回受けていることを挙げ、自白書を書いた時点で、既に腫瘍の影響で正常な判断ができる状況ではなかったと指摘。虚偽の料金請求も、病気の影響によるもので、不正ではなく誤りだったと弁明している。
検察当局は、こうした弁明に耳を貸す姿勢はみせていない。被害額を弁済したからといって犯罪の事実が消えることはないからだ。とりわけ、ハリケーン被害の救済は、国民の税金で賄われているため、これをだまし取る行為には、厳しい処罰が待っていることになる。
弁護側が「脳に損傷を受けた者を起訴し、投獄しようとしている」と主張していることに対しても、検察側はこうした問題はすべて、公開の法廷の場で論じられるだろうと一蹴している。
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