2006年03月19日18時44分掲載  無料記事
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子どもの親権めぐりローマで米女性を殺害か 8年前の変死事件で裁判

   イタリアの首都ローマで1998年、米カリフォルニア州出身の29歳の女性が、イタリア人の元ボーイフレンドのアパートで変死した。この女性は男性と、二人の間に生まれた少女の親権を裁判で争っていた。このため殺人、事故死の両面で捜査が行われたが、当時の警察は証拠不十分で男性を釈放した。それから8年。イタリアの検察当局は、ようやくこの男性を殺人罪で起訴し、今月から裁判所で審理がスタートした。被害者の両親は、「娘は殺された」と真相解明に執念を燃やしていただけに、今後の裁判の行方に注目している。(ベリタ通信=江口惇) 
 
 この男性は実業家のカルロ・ベントレ被告(58)。被害者は米国人女性のトニ・ディクストラさん。被告は、子どもの親権をめぐり、トニさんを計画的に殺害した疑いがもたれている。 
 
 米CBS放送などによると、二人は、同被告がカリフォルニア州に住んでいたときに知り合った。21歳の年の差があったが、二人に間もなく女の子が生まれた。しかし、その後関係が悪くなり、子どもの親権をめぐりカリフォルニア州の家庭裁判所で争う形になった。 
 
 被告は98年1月、裁判所の決着がついていない段階で、子どもを連れて勝手にイタリアに帰国。このためトニさんがイタリアの裁判所に提訴。裁判所は同年7月、被告の行為は「誘拐に当たる」として、トニさんが子どもと米国に帰るのを認めた。 
 
 事件が起きたのは、この判決の直後。トニさんは、帰国予定日の前日の7月28日、ローマにある被告のアパートにいた子ども引き取りに出向いたところ、頭を強打して死亡した。 
 
 被告は、二人の間でいさかいが生じ、トニさんが斧を持って突然被告を襲ってきたと主張。自己防衛のため、トニさんを突き飛ばしたところ、床で頭を強打して事故死したとして無罪を主張している。 
 
▽謎の多い事件 
 
 しかし、救急車も呼ばず、最初に弁護士に電話してから警察に通報するという奇妙な行動を取っている。救急車を呼んだのは、現場に到着した捜査官だった。検死解剖の結果からは、早めに病院に搬送されていれば、助かった可能性も指摘されている。 
 
 裁判は5月末まで続く見通し。なぞが多い事件だが、有罪になれば最高で禁固21年の量刑になるという。 
 
 被告が子どもの親権を主張する姿勢は、幾分常軌を逸している。その後も子どもを追って米国に舞い戻り、米連邦捜査局(FBI)に誘拐容疑で逮捕され、米国で1年弱服役している。出所後も米国内で親権を争っていたが、トニさんの両親を殺害する計画を企てたことが発覚し、2005年7月にイタリアに強制送還された。 
 
 トニさんは生前日記をつけており、子どもの親権をめぐり、殺害される危険性があると綴っていた。死亡する前にも米国の家族への国際電話で、トニさんが、かなり心配している様子がうかがわれたという。 
 
 被告を恐れていたトニさんが、当日なぜ一人で被告のアパートを訪れたのかは、なぞの一つだ。被告は、トニさんはローマに来た後、よりを戻そうとしていたと話している。しかし、家族らは、被告が言葉巧みにアパートに呼びつけた可能性が大きいと述べている。 
 
 二人の間に生まれた子どもは現在10歳になっている。その後の親権争いの結果、現在はラスベガス郊外に住む被告の肉親に育てられている。 


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