2006年03月21日17時13分掲載  無料記事
http://www.nikkanberita.com/print.cgi?id=200603211713542

子どもを故国に連れ帰ったら妻の勝ち? 外国人配偶者との親権争い、米では「誘拐」

  フィリピン系の女性との間に3人の子どもを持っていた米国人男性が、女性が子どもを米国から勝手に連れ出し帰国してしまったため、途方に暮れている。国籍や人種の異なる男女の関係では、いったん子どもの親権などでこじれると、修復するためには途方もないエネルギーがいるようだ。この男性も、子どもを取り戻すために米連邦捜査局(FBI)、国務省などを通じて、フィリピン政府に働き掛けているが、両国の法律の違いなどが壁になって、ほとんど進展していない。(ベリタ通信=江口惇) 
 
 米紙ロサンゼル・タイムズによると、この男性は米カリフォルニア州サンディエゴ市に住むジョン・リー・スミスさん(47)。3人の子どもは、5歳の男の子と、4歳の双子の男の子。子どもたちがフィリピン系の妻フランシナ・フェルナンデスさんによって、マニラに連れ出されたのは2004年11月。スミスさんら二人は、子どもの親権をめぐり法廷で争っていた。 
 
 フェルナンデスさんは出国前、同州チュラビスタにある両親の家からスミスさんに電話。3人の子どもを連れてニュージーランドに休暇に出かけると告げてきた。親権をめぐる裁判が続いているため担当判事は、フェルナンデスさんに対し、子どもを海外に連れ出さないよう命じた。 
 
 ところがフェルナデスさんはこれを無視。FBIのその後追跡調査で、04年11月8日に、子どもを連れマニラに出国していたことがわかった。一方の親の承諾なしに海外に未成年者を連れ出せば、一種の誘拐罪になるため、逮捕状が出された。米国では有罪になれば、禁固3年までの刑に処される。 
 
 3人の子どもとの絆を突然断ち切られたスミスさんは、子どもを取り戻す努力を開始した。「言葉では言い尽くせない苦しみだった」とスミスさん。 
 
▽相手国政府の見解に相違 
 
 フェルナデスさんの母親のソニアさんは、フェルナンデスさんがマニラに向かったのは、スミスさんの子どもへの虐待から守るためと主張している。しかし、親権をめぐる裁判の記録では、裁判所は虐待の事実を否定している。 
 
 FBIなどの動きを受け、フィリピン政府も問題解決に協力する姿勢をみせた。しかし、フィリピンなど多くの国々では、一方の親が子どもを連れ出すことを誘拐とはみていない。むしろこうした家庭上の問題は裁判所が判断すべきだとの考えだ。 
 
 業を煮やしたスミスさんは、自らマニラに乗り込み、子どもを逆に誘拐して米国に連れ戻そうと飛行機の切符を予約した。しかし、FBIから説得されマニラ行きを断念した。 
 
 この後、カリフォルニア州選出の上院議員にも仲介を依頼したが、駄目だった。3人の子どもは米国籍だったが、フィリピンに滞在している制約から、フィリピン当局がフェルナデスさんの強制送還に協力しない限り、子どもが米国に帰る可能性は低い。 
 
 スミスさんは、子どもがいなくなってから建設の仕事を休み、ほとんど家から離れないようにしている。いつフィリピンの子どもたちから電話がかかってくるのかわからないからだ。 
 
 一方、米国には、スミスさんのように子どもが国外に連れ出され、苦悩している親が多数いるという。米国務省は現在、国外連れ出しに関し1000件の事件を取り扱っている。このうちフィリピン関係は7件という。 


Copyright (C) Berita unless otherwise noted.
  • 日刊ベリタに掲載された記事を転載される場合は、有料・無料を問わず、編集部にご連絡ください。ただし、見出しとリード文につきましてはその限りでありません。
  • 印刷媒体向けの記事配信も行っておりますので、記事を利用したい場合は事務局までご連絡下さい。