2006年03月24日13時37分掲載
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テロリスト容疑の青年の釈放命じる 米政府の無期限拘束を批判
スリランカの青年がテロリストの嫌疑をかけられ、米カリフォルニア州サンディエゴの移民収容施設に長期間拘束されていた問題で、サンフランシスコ連邦高裁はこのほど、拘束は「不合理であり、正当化できず、連邦法に違反している」と強い調子で批判。青年の釈放を命じる決定を下した。青年は故国で拷問を受けたとして政治亡命を求めていたが、米政府はかたくなに「彼はテロリストだ」と主張して亡命を認めず、5年間にわたり拘束を続けていた。(ベリタ通信=江口惇)
各種報道を総合すると、この青年はアヒラン・ナダラジャさん(26)。2001年の9・11同時多発テロの一カ月後に、カリフォルニア州とメキシコ国境にある国際検問所から不法に入国を図った疑いで逮捕された。米国への不法入国は、故国スリランカでの虐待から逃げるためだった。
ナダラジャさんは、スリランカでゲリラの仲間と間違えられ、逮捕され、拷問された経験を持つ。スリランカでは、多数派(仏教徒中心)のシンハラ人と、分離独立を目指す少数派(ヒンズー教徒中心)のタミル人の間で内戦が続いている。ナダラジャさんは、タミル人の武装勢力「タミル・イーラム解放のトラ」のメンバーの容疑をかけられた。
ある日、武装兵士が自宅を訪れ、ナダラジャさんを殴り、目隠しをさせた後、軍事キャンプに連行した。
▽拷問の末に米へ出国
取り調べの段階で、ナダラジャさんは激しい拷問を受けた。ガソリンを浸した頭巾をかぶせられ、たばこの火を体に押し付けられた。またパイプやゴムホースで殴られ、武装勢力の一員であることを自白するよう迫られた。
幸い母親が賄賂を使い、獄から出すことに成功したが、その後スリランカを脱出し、米国に向かった。
米国でスリランカの武装勢力に属するテロリストして逮捕されたが、移民判事は故国で拷問を受けた話を「信頼できる」と認定し、亡命を認めた。しかし、政府はこれを不服として争った。その結果、ナダラジャさんは、亡命が認められているのに、保釈も認められず、長期間拘束されることになった。
米政府がナダラジャさんの拘束を正当化したのは、当局への通報者が、「テロリストだ」と証言したためだという。
しかし、サンフランシスコ高裁は、3人の判事の全会一致でナダラジャさんが「国家安全保障に対する脅威」とする政府の見方を退け、釈放を命じた。
ナダラジャさんの弁護士は「裁判所の決定は、政府は根拠もないのに人々を無期限に拘束できないことを確認したものだ」と評価している。今回の決定は、多数のテロリスト容疑者の無期限拘束を続けている米政府に対して、警告の意味合いを持つ内容になっている。「裁判所が政府にメッセージを送った」と弁護士は解説している。
米政府は決定を不服として最高裁に上告する道も開かれているが、上告を断念すれば、近く5年ぶりに釈放されることになる。
決定を聞いたナダラジャさんは、「政府が私を釈放する日が訪れることになり、うれしい」と語っている。
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