2006年03月28日12時13分掲載
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「健保途上国」米国で中南米系移民の保険解約めぐり訴訟
米国には国民皆保険のような制度がなく、健康保険が必要な場合は、民間の健保会社に加入する。しかし、高い掛け金を払って健康保険に加入して「さあ、安心だ」と思うのは間違いのようだ。米カリフォルニア州サンタナに住むヒスパニック(中南米系)の夫婦は、保険に加入し保険金を払っていたが、健保会社が途中で、一方的に解約してしまい、巨額の治療費を請求された。このため夫婦は、健保会社を相手取って、裁判を起こす事態になった。(ベリタ通信=江口惇)
米紙ロサンゼルス・タイムズによると、ラウデル/マリア・ロドリゲス夫妻は2005年夏スペイン語TVチャンネルで、ある健保会社のコマーシャルを見て、健保の代理人に連絡を取った。
代理人は二人が英語が話せないため、保険の内容をスペイン語で説明した。その後、二人のもとに契約書が送られてきた。契約者は英語で書かれていたため、二人はともかく、サインだけして送り返した。同年8月から保険金の支払いが始った。
その数週間後、53歳のラウデルさんが胸に痛みを感じたため、医師の相談を受けた。診断の結果は「異状なし」だった。しかし、痛みが続くため、専門医が診断したところ、冠状動脈に異状があり、手術を受けなければ、心臓発作に襲われると通告された。
米国では保険に未加入で手術を受けたら、途方もない高額の治療費を請求される。ラウデル夫妻は、うまいタイミングで健康保険に加入していたと喜んだ。
同年9月に手術を受け、3日間入院した。その数カ月後、健保会社から英語で書かれた解約の通告の手紙が送られてきた。しかし、英語が読めないため二人は何が書かれているのかわからなかった。保険が解約されていると初めて知ったのは、ラウデルさんが、術後の検査で病院を訪れたときだったという。
▽医師の診断受けた報告なかったと保険会社
健保会社が解約したのは、ラウデルさんが保険加入の前に、一時期に胸の痛みを訴え医師の診断を受けたことを報告していなかったため。しかし、ラウデル夫妻はその時は、医師が「胸やけ」と診断し、特に異状はなかったと指摘。健保会社にもこれを伝えていたと反論した。
健保会社はその後、数カ月間払った保険金計1700ドルを返してきたが、二人には、病院側から医療費として13万ドル(約1500万円)の請求書が届いた。巨額の請求額を前に「1カ月以上、毎日泣き続けた」とマリアさん。
ラウデル夫妻の弁護士は、健保会社は、保険の売り込みの際にはスペイン語で交渉しておきながら、その後は二人にわからない英語の契約書や手紙を送るなど、二人を混乱させようとしていたと指摘。
また、健保会社は高額の医療費を払いたくないため、当時の医師が問題にしていなかった「胸やけ」を保険料を払う段階になって、問題視する違法な行動を取ったと批判している。
ラウデル夫妻は、裁判で解約無効が認められなければ、現在の持ち家を売却するしか方法がないという。保険が解約されて以降、術後の診断にもいけない状況になっている。
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