2006年03月29日02時07分掲載
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米大統領選出方法は不平等で時代遅れ NYタイムズ紙も改革支持
2000年の米大統領選挙(任期4年)では、国民の一般票を最も多く集めた民主党候補のゴア副大統領(当時)が、ブッシュ氏に敗北した。これは、米国が大統領選出をめぐっては、間接選挙制を採用しているために起きた現象だ。これに対し、最も高い票を得た候補が大統領になれないのはおかしい、と草の根民間グループが、事実上の選挙制度改革を提唱している。リベラルで知られる東部の名門紙ニューヨーク・タイムズも、運動の趣旨に賛同する論調を掲げている。(ベリタ通信=苅田保)
このグループは、選挙制度改革を要求する「フェアボウト」や元連邦議員らで構成される。「一般投票で敗北した者が当選するのは不平等で時代錯誤だ」と主張し、実質的な大統領直接選挙の実現を求めている。
米国の大統領選挙は、全米50州と首都ワシントンにそれぞれ割り振られた「大統領選挙人」を多くとった方が勝ちという、間接選挙だ。「大統領選挙人」の総数は538人。各州ごとに多数票を獲得した候補が、州ごとに割る振られた「大統領選挙人」を取るため、勝者総取り方式と呼ばれる。
大激戦となった2000年のブッシュ・ゴア両氏の戦いでは、一般投票でゴア氏は「5099万9897票」(全体の48・38%)を獲得。これに対し、ブッシュ氏は「5045万6002票」(同47・87%)で、多数票を取った者が勝つ選挙なら、ゴア氏が大統領に就任しているはずだった。
この逆転現象が起きたのは、州ごとの「大統領選挙人」の獲得数をめぐり、ブッシュ氏が「271人」を獲得し、ゴア氏は「266人」にとどまったためだ。
2004年の大統領選挙では、現職のブッシュ氏が、民主党の対立候補ジョン・ケリー上院議員を一般投票でも破り再選を果たした。ところが、この際でも、仮にケリー候補が、オハイオ州で勝利し「大統領選挙人」を獲得していれば、2000年の再現になるところだったという。
つまり、ケリー候補が一般投票で敗北しながら、「大統領選挙人」の獲得数でブッシュ氏を上回った可能性があった。
▽「総取り式」に問題
米国の過去の大統領選挙では、大半が一般投票で多数を得た者が、同様に「大統領選挙人」を獲得している。しかし、一般投票で多数を得た者が、大統領になれないことが過去に数回起きているため、間接選挙制の矛盾を指摘する声が昔から上がっていた。
これまでも大統領選の改革論議が盛んになったことがあるが、その都度合衆国憲法の改正に発展する恐れがあるため、いずれも不発に終わっていた。このため「フェアボウト」などの改革要求グループは、「大統領選挙人」の名称は温存するが、実質的になし崩しにする方策を提唱。
この案では、各州に対し、一般投票で多数を獲得した候補が「大統領選挙人」を総取りすることを許す州法案の制定を呼びかけている。
ニューヨーク・タイムズ紙も「大統領選挙人」制度は「反民主的な遺物だ」と指摘し、この制度が見直されれば、米国の民主主義は、さらに一層民主的になると述べている。
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