2006年03月30日04時04分掲載  無料記事
http://www.nikkanberita.com/print.cgi?id=200603300404594

婚外子に日本国籍与えないのは「憲法違反」 フィリピン人の母持つ子の訴え全面勝訴 東京地裁判決

   【東京=マニラ新聞特約30日】結婚していないフィリピン人女性と日本人男性の間に生まれたフィリピン国籍の子供9人が、国に日本国籍の確認を求めた集団訴訟の判決で、東京地裁は29日、「両親が結婚していないことを理由に日本国籍を認めない国籍法の規定は、法の下に平等を定めた憲法に違反する」として全員の日本国籍を認めた。 
 
 同様の国籍確認訴訟の違憲判決では、昨年4月の東京地裁判決(二審で逆転敗訴、原告側が上告)に次いで2例目。 
 
 今回の判決は、内縁関係を重視した前回判決に比べ、内縁関係があるなしにかかわらず、国籍法の婚姻規定そのものを違憲と判断しており、原告弁護団の近藤博徳弁護士は「正面から国籍法の規定の違憲性を認めた画期的な判決」と評価している。 
 
 提訴していたのは、東京、埼玉、神奈川、千葉などに在住の6―12歳の男女児9人。出生後に全員が日本人男性に認知されたが、日本国籍の申請書を不受理とされたため、昨年4月に集団で国籍確認訴訟を起こしていた。 
 
 裁判では内縁の夫婦と法律上の夫婦の子の扱いを区別する国籍法の規定の適否が争点になった。 
 
 管野博之裁判長は判決文で、「国籍法は母が日本人なら結婚しなくても子の国籍取得ができるのに、母が外国人の場合は結婚を国籍取得要件に定めている。この結果、父母の婚姻いかんによって子供の立場に大きな差異が生ずる」と指摘、「父母の婚姻を婚外子の国籍取得の要件としている国籍法の規定は、憲法に違反する不合理な差別で無効」と判断した。 
 
 国籍法は婚姻関係にない日本人男性と外国人女性の間に生まれた子供の国籍について、出生前に父親が認知すれば日本国籍を取得できるが、出生後の認知の場合、両親が婚姻関係を結ばないと日本国籍を取得できないと定めている。 
 
 近藤弁護士は「すっきりした判決だ。最終的には最高裁の判断になると思うが、この判断が高裁、最高裁でも認められ、今回の子供たちだけでなく、日本在住の日本人を父に持つ子供たちの国籍問題が解決されることを切に祈りたい」と述べた。(東京支局) 
 
■「認められてうれしい」 
 
 国籍確認訴訟の判決後、原告の子供と母親たちは29日午後3時すぎから東京・霞が関の司法記者クラブで原告弁護団の近藤博徳弁護士らと一緒に記者会見し、「日本国籍を認められてうれしい。裁判所とみなさんに感謝したい」「これで終わるわけでないので、応援してください」「私たちだけの子供の問題ではなく、全国にたくさんいる同じ境遇の子供たちのためにも頑張りたい」と口々に喜びを語った。 
 
 ロサーナ・タピルさん(41)=埼玉県在住=は、二人の子供のうち、比国籍の長女(8)の日本国籍を確認するため原告団に加わった。四年後に生まれた二女(4)は出生前に認知され日本国籍を取得している。 
 
 「父親の認知が胎児の時と出生後で違うなど知らなかった。こんな国籍法は日本人でも知らない人が多い」というロサーナさんは、「昨夜は判決が心配で眠れなかった。本当にうれしい」と涙ながらに話し、「国は控訴しないでほしい」と訴えた。(東京支局) 
 
 
■フィリピンにも多くの婚外子 
 
 比女性の日本就労増に伴い、離婚や父親の養育・認知拒否でフィリピンに帰国後、母子が困窮するケースが急増している。厚生労働省の人口動態統計によると、1993―2004年の12年間で、日比夫婦の間で出生、日本の戸籍に名前が記載された日本とフィリピンの「新二世」の総数は六万三百七人。戸籍未記載のケースを含めた新二世の実数はこの数字を大きく上回るとみられる。フィリピンでは1990年代半ばから日本の市民団体「JFCを支えるネットワーク」や「マリガヤハウス」などが父親探しや法的支援を続けている。 


Copyright (C) Berita unless otherwise noted.
  • 日刊ベリタに掲載された記事を転載される場合は、有料・無料を問わず、編集部にご連絡ください。ただし、見出しとリード文につきましてはその限りでありません。
  • 印刷媒体向けの記事配信も行っておりますので、記事を利用したい場合は事務局までご連絡下さい。