2006年04月10日00時45分掲載
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米軍が若者のタトゥーに理解 イラク泥沼で志願者減少し方針転換
イラク戦争の影響で新兵募集が定員割れとなった米軍が、タトゥー(刺青)があるからといって入隊をあきらめないで─と、若者に呼びかけている。米軍は従来、タトゥーを入れた入隊希望者に対しては、タトゥーが体のどこに彫りこまれているかで入隊を拒否してきた。しかし、イラク戦争の結果、軍隊志願者が減少。このためこれまでの厳しいタトゥー政策を見直し、これまでは入隊できなかった若者を積極的に受け入れる方針を打ち出した。(ベリタ通信=有馬洋行)
米軍にとって2005年度(2004年10月〜05年9月)は新兵募集で最も厳しい結果になった。8万人の定員に対し、7000人が不足する事態に直面したからだ。この数字はかなり深刻な数字だと国防総省や米軍は考えている。
米軍は従来徴兵制を取っていたが、ベトナム戦争の影響で1973年から志願制に変更されている。この結果、有事の場合は、徴兵制と違って新兵募集が難しくなる。
イラク戦争で米兵士の死亡や負傷が相次いで報道されたことも新兵不足の要因の一つになっている。このため新兵確保のため、入隊テストの基準を下げたり、薬物中毒の経歴を持つ者でも入隊をOKするなど、審査基準がかなり甘くなってきている。
米軍は、若者のタトゥーについては、どこにそれがあるかで入隊か拒否かの判断にしてきた。例えば、制服を着た際に、タトゥーがはみ出して見える恐れがある場合は、入隊は見送りとなった。
■米成人の入れ墨率は30%
しかし、ある調査報告によると、35歳以下の成人でタトゥーを入れている割合は約30%に達している。また彼らの父親らが属する「ベビー・ブーマー世代」に比べても、現代の若者は3倍も多くタトゥーを入れている。
このため米軍は、タトゥーが若者文化の一つとなっているときに、タトゥーについて厳しい方針を継続し、入隊希望者を逃すことは賢明でないと判断した。
新方針は、タトゥーを全面解禁にするものではない。頭や顔、のどに入ったタトゥーは禁じられたままだが、「首」と「手」に限っては、その内容が過激、下品でなく、かつ人種差別を起こさせないとの条件で、容認することにした。
軍の新兵募集係は、何が過激なタトゥーかについて訓練を受けている。街のギャングや、過激派がメンバーのシンボルとしてタトゥーを入れている場合もあるからだ。最新の情報は、ウェブサイトなどを検索して得ているという。
退役軍人の間からは、タトゥーに関する基準が緩やかになっていくことを憂える声も聞かれる。ある元中将は「テレビで顔中がタトゥーだらけの人物を見たことがある。あのような状態になれば、とても容認できない」と、釘を刺している。
一方、軍の規律では、新兵募集係が、過激かつ下品なタトゥーを消すよう入隊希望者に忠告することは禁止されている。しかし、ギャングのメンバーの中に、タトゥーを消して、軍隊で新しい人生をやり直そうとする者も多いという。こうした元ギャングたちに、無料でタトゥーを消すサービスを提供している支援組織もある。
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