2006年04月11日08時37分掲載
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カトリーナ大災害
ハリケーン復興の主役はヒスパニック 仕事を当て込み大量流入
昨年夏に米南部を襲った超大型ハリケーン「カトリーナ」などで堤防が決壊し、建物が破壊されたルイジアナ州ニューオリンズ。その再建に、ヒスパニック(中南米系の人々)が駆り出され、大きく貢献しているという。崩壊した住宅、水浸しになったホテルなどの大掃除に、ニューオリンズは、多くの人手が必要だ。しかし、市内は完全復旧には程遠く、かつて人口の多くを占めていた黒人層も、住む場所がないため以前多くが帰還できないでいる。この空白を埋めているのが、賃金の安いヒスパニックだという。(ベリタ通信=江口惇)
昨年9月、市内を覆った水が引いた直後、被災で生活がマヒ状態に陥った人々が、ニューオリンズから一時的に去ることを余儀なくされた。このニューオリンズから脱出を図る市民とは対照的に、逆にニューオリンズに流入してきたのが、メキシコ人などのヒスパニックだ。
米南部がハリケーンで大被害が受けた後、ヒスパニックの社会に「ニューオリンズにたくさんの仕事があるようだ」「建設現場の労賃は、(最低賃金の)2倍くれるそうだ」などといった、威勢のいい話が飛び交い、ヒスパニックのニューオリンズ移動が始った。
米国社会に合法的に定住しているヒスパニックは別にして、米国に不法入国してきたヒスパニックは、米国で働き、金を稼いで、家族の待つ故国に送金することに懸命だ。ニューオリンズでは、不法入国者の身元について、あまり調査されずに簡単に働けるとの情報も、ヒスパニックの移動に拍車をかけた。
米紙ロサンゼルス・タイムズによると、あるグアテマラ出身者は、ニューオリンズに向かったヒスパニックの一群を、「まるで“ゴールド・ラッシュ”のようだった」と形容する。
市内から汚水がひくや否や、ヒスパニックたちは一台の車の前部に3人、後部席に4人が乗り込み、車の屋根にはスーツケースや道具箱がくくりつけてニューオリンズに入ったという。
住宅の屋根の修復、壁のペンキ塗り、ごみの回収、倒木の処理など、ほとんどがヒスパニックたちによって行われた。多くの仕事が、米連邦緊急事態管理局(FEMA)の下請け仕事だった。
■大半が日雇い
ニューオリンズに到着した直後は、公園で寝起きして仕事を行い、シャワーはホースの水を使い、トイレは藪の中で済ませた。現在は、教会やモーテル、倉庫で寝起きしている者もいる。モーテルの一室に6〜8人が雑魚寝するのはざら。仕事は大半が日雇いだ。
ニューオリンズは、ジャズ発祥の地といわれるように、黒人が最も多く、次が白人という人口構成だった。しかし、ハリケーン被害後、ヒスパニックの大量流入が起き、現在1万から2万人のヒスパニックが生活しているという。
ニューオリンズでは、もともとあまりスペイン語が通じないが地域だったが、ことしの恒例の祭典マルディ・グラでは、旧市街のフレンチ・クウォーターで、ヒスパニックが働いているのが目立った。
ヒスパニックの増加を快く思わない市民もいるという。ヒスパニックは、ドルを稼ぐのが目的で、ニューオリンズ社会に同化しようとする意識は薄いからだ。
働き手だった多くの黒人が戻る家を失い、ニューオリンズに戻れない状態が続いている。ヒスパニックたちは、仕事がある限り、ニューオリンズにとどまるという。
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